2023/01/17
マネジメント
コールセンターの立ち上げ手順とは?構築方法、運営費用、注意点などを解説
円滑なコールセンターの運営には、センター全体の方針やどのようなセンターを目指すのか具体的なゴール設定が欠かせません。コールセンターの立ち上げを行う際、こうしたゴールの設定や設備に必要なシステム選定、業務フローの作成が必要になります。今回はコールセンターの立ち上げを検討している方に向けて立ち上げの手順や構築方法、低コストでの運用方法について詳しく解説していきます。
目次
コールセンターの基本的な立ち上げ手順
コールセンター立ち上げにあたって、初めに明確な「目標設定」と具体的な「構築設計」が必要です。今回はコールセンターとして、何がゴールなのかという目標の決め方やコールセンターの立ち上げに必要な業務プロセスや人材育成プロセス、システム構築などの構築設計の流れ、検討すべきポイントについて詳しく解説していきます。
目標設定とは
コールセンターとしての最終的なゴールのことを指します。コールセンターとして利益や売上の向上を図るために、顧客満足度に重点をおくべきなのか、生産性を最優先としてコスト削減がゴールなのかを明確にする必要があります。また、オペレーターから管理する責任者まで全員にセンターの目標・コンセプトの理解・共有はスムーズなセンター運営にとって最も重要といえるでしょう。
コールセンターの目標を曖昧なままスタートさせると、その時々の状況によってセンター運営の方針が揺らぎます。結果として顧客満足の低下や、スタッフのモチベーション低下により生産性ダウンにもつながり、コールセンターとしての最終的なゴールにたどり着けなくなることも十分考えられます。
構築設計とは
コールセンターの構築にあたって初めに現状の体制などについて調査を行います。調査ポイントとしては主に以下の5つの項目を確認し課題の認識・発見を行います。
細分化することで抜けや漏れを防ぎ、コールセンター運用の最適化が図れるでしょう。
- 運用プロセス
- マネジメント
- 組織体制
- 人材育成
- システム関連
コールセンターの立ち上げ手順①方針・目標(ゴール)設定
目標設定に欠かせない「KGI」と「KPI」とは
「KPI」とは
KGIを達成するために、段階的に設定する「中間目標」のことでKPI(Key Performance Indicator)と言います。コールセンター業務ではKPIが多く50種類以上を超えます。KPIはKGIと関連付ける点も注意して設定しましょう。ここでは代表的なKPIの例をいくつかご紹介します。
- コールセンターのKPIの設定例
- CPH(1時間あたりのコール数)を●●件、増加させる
- ACW(平均後処理時間)を●●秒、削減する
- 顧客ロイヤルティの改善のため、NPS(顧客推奨度)を●●%上昇させる
「KGI」とは
企業の経営目標を達成するために欠かせない、「最終目標」のことでKGI(Key Goal Indicator)と言います。一般的には売上や利益がKGIとなりますがコールセンターの場合、コール数や応答率、顧客ロイヤリティなど売上や利益に結びつく項目を設定することも多いです。ここではKGIの例をいくつかご紹介します。
- コールセンターのKGIの設定例
- 月間コール数を前月比で●●件、増加させる
- 応答率を前月比で●●%上昇させる
- 顧客ロイヤルティを前年比●●%改善する
KGIとKPIを明確に定める主なメリット
目標設定をするためには「KGI」と「KPI」を明確に定める必要があります。
KGIとKPIを明確に定める主なメリットは以下の3つです。
- 達成率を客観的に評価ができる
- 目標の可視化により、社員のモチベーションが高まる
- 優先順位が明確になることで生産性が高まる
KGIやKPIは定量的に数値目標を設定します。定期的に定めたKGIやKPIの進捗を確認することで現時点での目標達成率を客観的に評価でき、そうすることで課題認識の速度が速くなり軌道修正や業務改善に着手できます。
目標設定の可視化により、社員のモチベーションが高まる
KGIやKPIが設定されていないとオペレーターや管理者の貢献度は上長の主観的な評価に依存します。逆にKGIやKPIを設定することで目標が可視化され定量的に判断できるため客観的視点での評価ができるようになり、オペレーターや管理者が自身の成長を感じやすくモチベーションアップにつながります。
優先順位が明確になることで生産性が高まる
KGIやKPIを設定することでタスクが洗い出されます。洗い出されタスクの中で目標達成への優先度が高いタスクから消化していくことで生産性が高まります。
ただ、設定するだけでは課題解決にはつながりません。KGIとKPIを設定する時は「定量的に設定」「KPIとKGIは関連付ける」の2点に注意しましょう。
コールセンターの立ち上げ手順②現状の調査と課題の可視化
売上アップにつなげるためにKGIとKPIを設定しますがその前に現状の把握と問題点の可視化を行う必要があります。
まずは自社の課題を洗い出し達成したい目標をリストアップします。KGIは最終目標なので1~5年程の中長期的なゴールを設定するよいいでしょう。
続いてKPIですが必ずKGIと関連付けましょう。そこで便利なのが「ロジックツリー」というフレームワークです。KGIを達成するために必要な中間目標をツリー状に書き出していくことでKPIが洗い出されていきます。
定期的に目標設定を見直していくことで目標達成に近づいていきます。しかし見直しの中で人の力では解決できない課題もでてきます。その場合はCTIツールを取り入れることでチャットボットやIVRが活用でき業務の効率化など改善ができ、目標達成にもつながります。
コールセンターの立ち上げ手順③プロセスの設計
①で方針、目標(ゴール)を設定し、②で現状の調査と課題の可視化を行ったため、そこに対して③でその課題の解決に向けたプロセス設計を行う必要があります。プロセス設計は5つの枠組みに分類し行います。
現状の課題点を解決するためのプロセス設計
目標設定ができたら次に現状の課題解決のためのプロセス設計を行います。ここでは設計に必要な内容である「業務プロセス」と「人材育成プロセス」の2つについて詳しく解説していきます。
1:業務プロセス
業務プロセスとは目標達成のため、必要な業務フローを明確化していくことです。業務プロセスを細部まで設計することで緊急時やクレームが発生した際にも柔軟な対応ができるようになります。
コールセンターの運用に必要な機能を洗い出し、どのようなプロセスで作業を行うのかを明確にします。主にKGIやKPI、定例報告資料、報告方法、非常事態の対策、センターの体制、組織図などを明確にします。
一例になりますが、以下のような業務フローを設計するといいでしょう。
- 緊急対応の明確化
- オペレーターや管理者の配置などの組織図設計
- 数値報告の方法
- KGI・KPIの設定とマネジメント
あらゆる視点での業務プロセスを想定・検討することで臨機応変な対応が可能となります。決めた業務プロセスが上手く運用できているか客観的な視点で判断ができるように同時にKPIも設定しましょう。
KPI設定の例として以下のような内容があります。
- 1日あたりの対応件数
- 1件あたりの応対時間
- 1件あたりの処理時間
適正な数値を設定しマネジメントすることで目標達成に近づきます。
2:マネジメント
運用プロセスをスムーズに遂行するために必要な管理項目を洗い出し、どのような手法でどのタイミングにて管理するのかを明確にします。また、適正な管理ができているか判断するため、数値的な指標も明確にします。
3:組織体制
運用プロセスやマネジメントで洗い出した項目を元に作業工数を算出します。そして運用のために必要なオペレーター人数、管理者人数、チーム体制、役割分担を明確にして組織を構築します。
4:人材育成
コールセンターの業務において必要な役割を担う人材育成の教育プランを明確にします。
コールセンターの運用に必要な業務知識を身に着けるため、オペレーターや管理者に研修を受けてもらう育成プロセスを設計します。
主な研修としては以下の7つが挙げられます。
- 電話応対や応対品質の研修
- 情報セキュリティ研修
- コンプライアンス研修
- 商品知識研修
- マネジメント研修
- システム研修
- OJT研修
効率的な育成を行うためにも研修内容を充実させることが重要となってきます。
また、研修内容のわかりやすさや充実度がオペレーターの定着率に直結します。
丁寧な研修はもちろん、座学だけでは飽きられ集中力が持たないため、日々の研修にも工夫を行い人員の育成を行っていきます。
教育プランの充実により離職率が高いと言われるコールセンターでも定着率を高め採用コストの軽減にもつながります。
5:システム関連
コールセンターの運用に必要なインフラ設備やCTIツール、CRMツールなどコールセンターシステムを構築します。
コールセンターの立ち上げ手順④構築
業務プロセスや人材育成プロセスなど設計された要件定義に基づいてセンターの構築・実装を行っていきます。ここではコールセンターのスペース確保、ネットワーク設備や通信インフラに関する「システム構築」と実際に業務を行うオペレーターや管理者などコールセンター運用に携わる全員が可視化できるための「業務フロー」について詳しく解説していきます。
1:システムの構築
システム構築に必要な要素は以下の3つです。
- 拠点
- ネットワーク
- 顧客管理ツール
拠点
コールセンターの運営場所やセンターレイアウトの協議・確定、電話配線やその他コールセンターの運用に必要な什器や備品などの準備を行います。
ネットワーク
多くの顧客情報を取り扱うコールセンターではネットワークセキュリティポリシーに照らし合わせてネットワークの設計を行います。
顧客管理ツール
オペレーターが管理しやすい効率的に運用が行えるCRMツールの導入をして画面遷移や情報設定、管理フラグのセットアップを行います。また、CTIシステムも導入することで電話応対の効率化が図れます。
2:業務フローの構築
業務フロー構築に必要な「オペレーターの業務マニュアル」と「管理者用のマニュアル」について作成すべきマニュアルを紹介します。
- (例)オペレーターの業務マニュアル
- 機器やシステム操作マニュアル
- 電話応対スクリプト
- クレーム応対マニュアル
- 商品マニュアル
- 情報管理マニュアル
- (例)管理者用のマニュアル
- マネジメントマニュアル
- 管理者用システムマニュアル
- 数値管理マニュアル
- シフト管理マニュアル
- 品質管理マニュアル
- エスカレーション対応マニュアル
- 実績報告マニュアル
コールセンターは離職率が高く、長期的に働く人が少ない職種であることが現状です。
そのため、長く働ける環境作りも大切ですが、万が一に備え具体的なマニュアルを作成しておくことで新人オペレーターや管理者にも即座に対応できるようにます。
3:スタッフの採用・教育体制の構築
業務フローの構築が完了したら、スタッフ採用、教育体制の構築を行います。③のプロセス設計で定めた組織、人員体制に沿ってスタッフの募集、採用を行います。また採用後、コールセンターのスタッフとして必要な知識を身に着けていただくべく、研修を実施できるような教育体制を構築する必要があります。
- (例)研修内容
- 電話応対の研修
- コンプライアンに関する研修
- 扱うサービスや商品に関する研修
コールセンターの立ち上げにかかる費用の相場
いよいよコールセンター立ち上げとなった際に発生する費用はどの程度発生するのでしょうか?それぞれの費用の相場をご説明します。
コールセンターシステムの初期費用
システム導入費用や回線の敷設に関する初期費用が発生します。こちらはシステム提供企業によって大きく異なりますが、約0円~300万円ほどが相場となります。
コールセンターシステムの月額費用
こちらはシステム利用料や保守費用などが含まれます。また固定の利用料金とは別で、月々によって金額は異なりますが、通話料金も発生してきます。
人件費
その他、オペレーターやスタッフに支払う給料や研修に関する費用も発生します。オペレーターの時給の相場は、約1,200円~3,000円ほどになります。
コールセンター立ち上げの際の注意点
コールセンター立ち上げの際に事前に注意すべき「初期費用・ランニングコスト」「通信インフラの整備」「万全な運営体制」の3点について詳しく解説していきます。
初期費用・ランニングコストなど費用面は妥当か
コールセンター運用の初期費用やランニングコストは想像以上に高額です。
目的や規模、セキュリティ要件によって費用は異なりますが以下の項目の準備が必要です。
システム導入や採用を行う前に事業計画書を作成しておきましょう。
- コールセンターの内装工事費や家賃
- ネットワーク回線工事費
- ファシリティ(備品)
- コールシステム費用
- 各種システムやライセンスの導入費用(CRMツールなど)
- ノンボイスサービス導入費
- 人材採用費
コールセンターは長期的に運用を行っていきます。継続して運用ができるか見通しを立て、予算オーバーとなる場合は小規模での運用スタートなどを視野に入れる必要があります。
通信インフラの整備は整っているか
電話機やシステムの導入にあたって通信インフラの容量や速度は十分かの確認を行ってください。容量や速度が不十分だと音声品質に影響や顧客情報へアクセスする速度が遅く顧客を待たせてしまうことになります。顧客にとって「待つこと」は大きなストレスとなり、マイナスな印象を与えることになります。また、稼働効率も悪く余剰なコストが発生します。そのため、アクセスが集中した場合にも大容量のデータ通信が可能な環境を整えましょう。
万全な運営体制が取れているか
コールセンターの運用のため、万全な体制を整えることは円滑に業務を遂行するために重要です。コールセンターは売上目標と密接な関係にあり、営業部の配下に配置されることが多いです。ですが運用に発生するコストは総務や経理部、効果的な施策の企画はマーケティング部と複数部門が関わることが多いため円滑な業務遂行のためにも各部門同士の連携を高めることが重要となります。
また、実際に業務を行う際、オペレーターと管理者がセットとなり1つのチームとして取り組んでいくため、管理者の人数や適切なレイアウトでの配置をして管理ができる体制作りが必要です。オペレーターの近くに管理者を配置するとオペレーターが緊張し、本来の力を発揮できないことがあります。逆にオペレーターと管理者の距離が離れすぎるとクレームや顧客からの質問にスムーズな対応ができずに十分なバックアップが取れないケースもあります。
そのため、オペレーター個々の特性を理解し適切なオフィスレイアウトを組んでいくと良いでしょう。
CTIなら初期費用・ランニングコストが低コストでどんな環境でもスムーズな運営が可能
現在、注目を集めているCTIシステムには、クラウド型とオンプレ型があります。
クラウド型はインターネット回線の環境とPCがあれば最短3週間ほどで導入が可能です。オンプレ型は自社にCTIシステムのサーバーを設置して社内システムとの連携が必要なためクラウド型と比べて導入スピードは遅くなります。
クラウド型CTIシステムであればコールセンターの運用のために必要なサーバーやPBXのようなハードウェア、電話機などが必要ないためその分、初期費用を抑えることが可能です。設定変更もブラウザを利用して簡単に変えられるためオンプレ型のように専門家に依頼をするランニングコストも抑えることもできるでしょう。
また、毎月の運用コストについても利用期間や人数に応じて決まるため、環境に合わせて柔軟に対応することができます。
コロナ禍の影響でコールセンターの需要が増加している今、多くの企業がコールセンター立ち上げを検討しています。コールセンターの立ち上げには多くの初期費用やランニングコスト、通信インフラなど環境面の設備が必要なため、想像以上に導入までの手間や費用が発生します。
このような課題があり参入障壁が高く思えるコールセンター運用ですが、クラウド型CTIシステムであるCOLLABOS PHONE(コラボスフォン)を導入することで通信インフラの設備も必要なく低コストでコールセンターを立ち上げることができるでしょう。
この記事の執筆者
コラボスブログ編集部
株式会社コラボスは、2001年に設立。現在、東京・大阪にオフィスを構えており、
960拠点以上のお客様へクラウドサービスを使ったCTIシステムを提供。
本ブログ記事サイトでは、様々なニーズを抱えたお客様のお役に立てるような情報を日々発信。
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