2022/09/14
顧客情報管理
リピーターが急増するコールセンターが注目するべき顧客体験とは?
インターネットの普及により顧客のニーズは、商品やサービスを所有することに価値を感じる「モノ消費」から商品やサービスの提供を受ける前後の体験に価値を感じる「コト消費」へ変化しています。
顧客のニーズを把握し応えることはリピーターの獲得や、企業の業績を伸ばす上で非常に重要といえるでしょう。しかし、コールセンター業務は人員不足やオペレーター育成など課題が山積みで、顧客体験向上まで手が回らないのが現状ではないでしょうか。そこで今回は、顧客体験の基本的な考え方や改善方法、顧客体験向上に欠かせないCTIシステムの活用方法について詳しく解説していきます。
目次
顧客体験(CX)とは?
顧客体験とは、商品やサービスを購入する前から購入後に至るまでの企業と顧客が接触する「あらゆる接点」での顧客の体験のことです。
例えば、YouTubeやInstagramなどのSNSや街中の広告、Googleを使って商品や口コミの検索、カスタマーセンターへの問い合せなど、これらすべてが顧客体験です。
商品やサービスの利用体験だけではなく、商品やサービスを認知したタイミングから購入・契約して利用し続けるまでの「あらゆる接点」での経験をすべて含んでいるのが顧客体験のポイントといえます。
顧客体験(CX)のカギを握る「心理的価値」の重要性
顧客体験はあらゆる接点にて「何かを体験した」という事実だけではなく、その体験により顧客が感じる感情や心境の変化などの心理的体験がとても重要です。例えば、カスタマーセンターに問い合わせた際、想像以上にスムーズで丁寧な対応をしてもらい「感動した」という感情の体験も顧客体験のひとつといえるでしょう。
顧客体験は単なる顧客と企業の接触だけではなく、どのような体験を提供して感情の変化を感じてもらうかといった心理的価値こそが顧客体験のカギを握っています。
顧客体験(CX)は企業の利益に直結する顧客維持に欠かせない
顧客体験は、企業の利益に直結する顧客維持率には欠かせません。顧客維持率(Customer Retention Rate)とは、商品やサービスを継続的に利用している既存顧客いわゆるリピーターの割合を示す指標です。
新規顧客の獲得も重要ですが、商品やサービスの解約を抑止し顧客維持率を高めることは、中長期的に安定した売上・利益の確保につながります。顧客維持率を高めるため、商品・サービスの品質や機能性の向上に取り組むことは大切ですが、技術の進歩により他社との差別化を図ることが難しくなってきています。
そのため、コールセンターだけでなくすべての企業が他社との差別化を図るため、顧客体験の向上に取り組んでいます。
顧客体験(CX)が重要視される3つの背景
技術の進歩やインターネットの普及、顧客のニーズの変化により顧客体験が重要視されています。ここでは顧客体験が重視される、以下3つの背景について詳しく解説していきます。
- 顧客との接点が増加
- 商品・サービスの機能性だけでは差別化が困難
- 顧客のニーズがモノ消費(機能)からコト消費(体験)へ変化
顧客との接点が増加
近年、インターネットの普及により企業と顧客の接点が増加していることが、重要視される1つの要因となっています。コスメ用品を例にすると、インターネット普及する前まで顧客は専門店に訪れ購入するケースが一般的でした。一方、インターネットが普及した現代では、YouTubeやInstagram、などあらゆるポイントで企業と顧客が接触しています。
以前は接触ポイントが限られていたため、特定の接触ポイントのみ対策することで売上・利益など成果をあげることができていました。しかし、接触ポイントが増加した現代では、すべての接触ポイントで良質なサービスの提供が求められており、顧客体験が重要視される要因となっています。
商品・サービスの機能性だけでは差別化が困難
技術の進歩により、大手企業だけではなくどの企業でも顧客のニーズを満たす商品・サービスの機能を提供できるようになっています。そのため、商品・サービスの機能だけでは他社との差別化が難しくなっています。
例えば、A社とB社で同じ機能を持つ商品を提供していたとしても、どのような顧客体験を提供するのかによって商品・サービスの購入率やリピート率が変わってくるでしょう。そのため、顧客体験による他社との差別化が重要視されています。
顧客のニーズがモノ消費(機能)からコト消費(体験)へ変化
時代の変化とともに顧客のニーズも「モノ消費」から「コト消費」に変化しています。モノ消費とは、その名の通り商品の所有に価値を見出す消費傾向を指します。対してコト消費は、旅館やホテル、映画、美術館など所有では得られない体験や経験に価値を見出す消費傾向のことです。
インターネットの普及によりモノ消費からコト消費へニーズは変化しており、顧客は「体験」に価値を見出しています。こうしたニーズの変化に応えるため、企業は顧客体験を高めていく必要があります。
コールセンターの顧客体験(CX)を評価する指標
これまでのコールセンターでは、顧客の待ち時間を少なくするために、問い合わせに対して正確かつ迅速な対応が求められていました。しかし、近年インターネットの普及により大半の顧客がコールセンターに問い合わせる前にFAQを見ています。
FAQを見ても、「問題解決ができなかった」「より詳しく聞きたい」という顧客がコールセンターに問い合わせてくるのです。そのため、顧客の要望を理解し、適切な問題解決策や必要な情報の提示をすることで、顧客のロイヤリティを上げることになり良い顧客体験につながります。ここでは良い顧客体験を提供できているかを評価する代表的な指標である以下の2つについて詳しく解説していきます。
- NPS(ネットプロモータースコア)
- CES(カスタマーエフォートスコア)
NPS(ネットプロモータースコア)
NPSとは、ネットプロモータースコアの略称で、顧客に「この商品やサービスを知人にすすめたいと思いますか?」と質問してスコアを算出します。NPSのスコアが高いほど、顧客が商品・サービスを知人にすすめたいと思っており良い顧客体験を提供できていると言えます。
NPSは顧客ロイヤリティの指標とされており、顧客ロイヤリティは良質な顧客体験の結果です。つまりNPSを通じて顧客ロイヤリティを測ることは、顧客体験の評価につながります。
NPSのスコアの算出方法は以下の通りです。
- NPSスコア=9〜10点の回答(=推奨顧客)の割合―0〜6点の回答(=批判顧客)の割合
-
■計算例
- 9~10点の回答顧客の割合:60%
- 0~6点の回答顧客の割合:20%
上記の場合のNPSスコアは60%−20%=40となります。
CES(カスタマーエフォートスコア)
CESとは、カスタマーエフォートスコアの略称で、日本語では顧客努力指標と訳されます。
CESのスコアが低いほど、顧客が商品・サービスを利用する上での努力が少なく良い利用体験を提供できていると言えます。CESのエフォート(努力)とは、顧客が自身の問題を解決するにあたり、「コールセンターに電話がつながらない」「1つの窓口だけでは解決しない」などの手間や労力、ストレスを指しています。
CESでは、コールセンターの利用経験が、どれだけエフォートレス(努力不要)だったのかを測ることができます。CESのスコアを下げるためには、顧客の声を拾い企業と顧客の接触ポイントごとに適切な改善対策を打つことが大切です。
CESのスコアの算出方法は以下の通りです。
- CESスコア=6~7点の回答割合(努力) ― 1~3点の回答割合(努力不要)
-
■計算例
- 6~7点の回答顧客の割合:50%
- 1~3点の回答顧客の割合:30%
上記の場合のCESスコアは50%−30%=20となります。
顧客体験向上(CX)の改善策
コールセンターには人員不足、オペレーター育成、生産性向上などさまざまな課題があり顧客体験の向上まで手が回らないといったセンターも多いのではないでしょうか。しかし、コールセンターの課題を解決していく取り組みこそが顧客体験の向上つながるのです。そこで、ここでは顧客体験の向上につながる、以下3つのコールセンターの取り組みについて詳しく解説していきます。
- オペレーターサポート
- データ分析
- システム導入
オペレーターサポート
コールセンターは離職率が高く、人員不足が大きな課題となっています。人員不足は応答率の低下を招き、顧客にとって電話がつながらないなど負の体験につながります。また、離職率が高いということは新人が定着しない状況のためオペレーターの育成にも影響します。
経験の浅いオペレーターでは、顧客の要望に的確な対処ができず応答時間も長くなるため、顧客にとって負の体験となってしまいます。コールセンターにおける離職の原因はさまざまですが、オペレーター自身のスキル不足が原因の場合、研修の充実化や責任者のフォロー強化、マニュアル・FAQの整備など、オペレーターの負荷を軽減することが離職防止に効果的です。
離職率が低下することで応答率、応対品質の改善となり良い経験を顧客に提供できます。顧客に感動的な体験を提供することも大切ですが、すぐに電話がつながる、スムーズな問題解決ができた経験も顧客体験なのです。そのため、顧客のサポートだけではなくオペレーターサポートを行うことも顧客体験向上につながります。
データ分析
コールセンターのKPIとして代表的なのが売上と顧客満足度です。売上を上げるための業務と顧客満足度を上げる業務では、アプローチの仕方が異なります。そのため、多くのコールセンターでは、売上を上げるための業務と顧客満足度を上げるための業務を分けています。
しかし、顧客が「購入を検討する理由」「抱えている悩み」を積極的にヒアリングし共感や寄り添う姿勢を持ち応対することで、顧客のニーズが明確になり顧客満足度の向上や売上アップにつながります。このことから顧客満足度と売上は関連しており、売上データと応対内容を活用しどのような応対が売上・顧客満足度につながるのかを分析することが重要です。分析結果を基に適切な応対をすることで、顧客体験を向上させることができるでしょう。
システムの導入
システムを活用することで、顧客体験向上を図ることができます。例えば、システム導入による顧客情報や購買履歴の管理や、顧客一人ひとりに合わせた適切な応対の分析は顧客体験向上に大いに役立ちます。また、オペレーターの負荷を軽減するためのFAQ作成・検索機能などもあるため、顧客の抱える問題に対して適切かつスムーズな応対を行えるでしょう。顧客体験を向上する上で、システムの導入は非常に効果的な対策です。
オペレーターサポートとデータ活用に役立つCRMシステム
CRMとは、Customer Relationship Managementの略称で、日本語で「顧客関係管理」と呼ばれています。顧客関係管理を支援するツールはCRMシステムと呼び、多くのコールセンターで導入が進んでいます。
CRMシステムには顧客との関係を管理し深めていく機能が備わっており、CRMシステムの機能を活用することで、オペレーターサポートや顧客に関するさまざまなデータが分析できます。
CRMシステムの基本機能
CRMシステムに顧客情報や購買履歴を入力しデータを集約・分析することで、顧客との関係を維持または向上させるためのアクションを導くことができます。ここでは、CRMシステムに搭載されている、以下5つの代表的な機能について詳しく解説していきます。
- 顧客管理機能
- 情報共有機能
- FAQ作成・検索機能
- データ分析機能
- CTI連携機能
顧客管理機能
CRMシステムには、顧客の氏名や性別、年齢、住所、電話番号などの基本情報や購入日、購入金額、購入頻度などの購入履歴、問い合わせ内容、クレーム内容などの情報を管理する顧客管理機能が備わっています。こうした顧客情報を蓄積することで、顧客の動きを管理でき顧客との関係性を向上させるヒントにつながります。
情報共有機能
情報共有機能には、顧客からの問い合わせでオペレーターでは回答が困難な質問が寄せられた際に、すぐに責任者に質問ができるチャット機能があります。また、マニュアルの更新や注意事項を漏れなく周知するための、掲示板やお知らせ欄などの機能も備わっています。
社内の情報共有やオペレーターと責任者間の連携がスムーズになることで、適切かつスムーズな応対ができ関係性の向上につながります。
FAQ作成・検索機能
顧客からの問い合わせ内容の中で、「よくある質問」の回答を作成できるFAQ作成機能があります。作成したFAQを社内で共有、HPなどに外部公開することもできます。FAQの充実化は、オペレーターサポートや顧客の問題解決につながるでしょう。また、作成したFAQは、顧客情報や問い合わせ履歴の検索にも利用できます。
データ分析機能
応対時間や応対時間の長い問い合わせ内容など、各種データを分析する機能があり、購買履歴などと併せて多角的な分析ができます。データ分析をすることで、、1人ひとりに合わせた適切な応対ができるため、良い顧客体験を提供できるだけでなく、より深い関係性作りにも役立てられるでしょう。
CTI連携機能
CRMシステムは、CTIシステムと連携することができます。CTIシステムと連携することで、発着信時にPC上に顧客情報や過去の応対履歴を自動で表示できます。過去の応対履歴を確認できるということは、顧客が何回も同じ説明をする必要がないため良い顧客体験につながるでしょう。
顧客体験向上(CX)に役立つCRMとCTIの連携
顧客情報管理を行うことができ、収集したデータを基にFAQ作成やデータ分析に役立つCRMシステムですが、CTIシステムと連携することでより高い効果を発揮できます。CTIシステムにはレポートが備わっており、コールセンターを運営する上で重要な応答数や応答時間、応答率などさまざまなKPIを分析し可視化することができます。
また、音声録音機能も備わっているため、応対内容の分析にも役立ちます。CRMシステムで顧客情報からVOC分析を行いCTIシステムでKPIや応対内容分析を行うことで、効果的な顧客体験(CX)の向上の対策を打つことができるでしょう。
まとめ
今回はモノ消費からコト消費へと顧客のニーズが変化する時代で、顧客体験向上の重要性と、多くのコールセンターの課題である人員不足や育成などの課題を解決することこそが顧客体験向上につながることを解説しました。
体験という「コト消費」に変化した顧客のニーズに応えることが、他社との差別化を図ることにつながり購入率やリピート率が向上しコールセンターの業績を向上させるのです。しかし、人員不足など課題が山積みのコールセンターでは、顧客体験向上まで対策を打てていないのが現状ではないでしょうか。そうした悩みの解決に役立つのが、CRMシステムとCTIシステムの連携です。CRMシステムとCTIシステムを連携することで、課題を解決しながら効率的に顧客体験の向上が図れます。コラボスでは顧客体験向上や課題解決、業務の効率化に役立つシステムを提供しておりますので、お考えの際はコラボスまでご相談ください。
この記事の執筆者
コラボスブログ編集部
株式会社コラボスは、2001年に設立。現在、東京・大阪にオフィスを構えており、
960拠点以上のお客様へクラウドサービスを使ったCTIシステムを提供。
本ブログ記事サイトでは、様々なニーズを抱えたお客様のお役に立てるような情報を日々発信。
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