コールセンターで働くスタッフの13%が派遣社員 派遣社員の雇用実態を徹底解説
人手不足が深刻な問題として話題となっているコールセンターでは、アルバイトや派遣社員など「非正規労働者」と呼ばれるスタッフが多く在籍しています。
「採用コストが低い」「離職者に変わる人材をすぐにでも確保したい」といったコールセンター特有の理由が非正規労働者の採用に大きく関係しているといわれています。
では、実際、コールセンターで働く派遣社員がどのくらいの割合を占めるのか。また、彼らがどのようなポジションで業務を行っているかなど、その実態と今後について詳しく解説します。
コールセンターのスタッフの92%が「アルバイト・派遣社員」
コールセンターでは電話応対など窓口業務が主な業務になるため、アルバイトや派遣社員が占める割合が大半です。
東京大学社会科学研究所人材ビジネス研究寄付研究部門が2006年7月に行った調査のよると、センター全体で正社員・非正規社員の割合は正社員が8%、派遣社員が13%、アルバイトが79%となっています。
中でも派遣社員の割合は、厚生労働省の「平成 19 年就業形態の多様化に関する総合実態調査」と比較して、派遣社員の割合の高い製造業・通信事業など他業種よりも高い数値といえます。
派遣社員の主な業務
コールセンターの派遣社員の主な業務は、顧客からの問い合わせを受け、それらに対する回答や手続きなどを案内することです。
主にインバウンドと呼ばれる受電業務はこれに当たります。問い合わせの対応は業種によってさまざまですが、大きく分けて以下の3つに分類されます。
テレオペ
一般的にコールセンターのオペレーター業務を総称して「テレフォンオペレーター」や「テレオペ」と呼ばれています。
テレアポの業務は商品・サービスに対する問い合わせに対しての回答やサービス内容の変更や支払い手続き方法の案内、修理やクレームについて各専門部署へ対応を依頼するなど多岐に渡ります。
カスタマーサポート
製品の取り扱いや商品の詳しい説明をはじめ、修理対応や時にはクレーム対応なども行います。
また、ECサイトの場合、顧客からの注文依頼の受け付けや製品説明などが主な業務になります。
そのほか、顧客から寄せられた意見や要望を取りまとめ、営業部や開発部に報告することもカスタマーサポートの重要な業務といえるでしょう。
テクニカルサポート
テクニカルサポートは、IT製品やシステムなどの操作方法や不具合の解決方法など技術的な問い合わせに対応する部署になります。
カスタマーサポートが一般的な問い合わせに対応するのに対し、テクニカルサポート製品やシステムなどの専門的な問い合わせに対応する機会が多いのが特徴です。
そのため、専門的なシステムやIT知識を持ったオペレーターが対応することが一般的です。
アルバイトと派遣社員の違い
コールセンターに在籍するアルバイトと派遣社員が担当する業務はほぼ変わりません。アルバイトと派遣社員の違いは大きく分けて雇用形態と時給の2つがあります。
雇用形態
コールセンターの運用元の企業が直接雇用するアルバイトに対して、派遣社員の雇用先は派遣会社です。
直接雇用されるアルバイトの雇用期間は法的に決まっていませんが、派遣社員の雇用期間は最長3年と決まっています。(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第40条の2第5項の2 )3年を超えて雇用する場合、派遣社員が希望すれば正社員として直接雇用関係を結ぶことも念頭に置かなければなりません。
コスト面から派遣社員を雇用しているセンターにとっては、大きな負担になるといえるでしょう。
時給
コールセンターの平均時給はアルバイトで992円、派遣社員で1,331円です。派遣社員の時給がアルバイトよりも高額な理由は主に2つあります。
1.昇給・賞与・交通費などの諸経費が加味されているため
2.派遣会社が自社の求めるスキルを持った人物を紹介してくれるため
直接雇用のアルバイトと違い、派遣会社に自社の求める人物像を伝えることで希望に見合ったスキルを持つ人材を紹介してくれます。
そのため採用コストが掛からず、即戦力として活躍が期待できる人物を採用できます。
また、正社員であれば支給される賞与や昇給、交通費などの諸手当も時給に反映されます。
賞与や昇給は基本的に派遣元である派遣会社が支払うため、直接雇用の正社員と比べ少額ですがスキルや勤続年数に合わせ、派遣会社から時給の引き上げを求められることがあります。
そのため、アルバイトよりも時給が高くなるのです。
2021年の派遣改正法で変わったこと
派遣法は正規雇用者と非正規雇用者の賃金や待遇の格差を改善することを目的に2020年4月と2021年1月、4月に改正が行われました。2020年4月に改正された派遣法では、「同一労働同一賃金」の実現のため、正社員と派遣社員の労働待遇の格差をなくすさまざまな取り組みを掲げています。
従来の派遣法と大きく異なる点は「努力義務」だったものが「義務化」になったことです。
2021年1月・4月の改正では、正社員と派遣社員の労働条件を均一にするべく、さらに具体的な内容に変更されました。
これにより、派遣元はもちろん派遣先もさまざまな対応を求められるようになりました。
2022年現在、新たな改正を行われることはなく、現行の法整備に基づいた業務改善が求められています。
労働者派遣契約書の電磁的記録の有効化
改正以前も労働者派遣契約書の電磁的記録についは有効性が認められていました。
ですが、労働者派遣法施行規則21条31項において「労働者派遣契約の当事者は、当該労働者派遣契約の締結に際し法第26条1項の規定により定めた事項を、書面にしておかなければならない」と規定されていたため、紙の契約書の作成が必要でした。
ですが、2021年の改正において電子契約書の有効性が改めて認められたことで、契約条件の記載漏れや更新漏れなどを未然に防げる・契約に関する手続きがスムーズに行えるなど派遣元・派遣先の両方にメリットのあるものになりました。
派遣先における派遣社員の苦情処理の義務の強化
改正以前にも厚生労働省 労働者派遣事業関係業務取扱要領 第9 派遣先の講ずべき措置等の中の苦情の適正な処理において「イ 苦情の申出 派遣労働者から出される派遣先における苦情の申出(例えば、指揮命令の方法の改善等)は、派 遣先事業主、派遣労働者を直接指揮命令する者、派遣先責任者に限らず派遣先や派遣先に代わって 派遣労働者を管理する職務上の地位にある者が認識し得るものであれば申出としての効果を持つも のであり、その方法は、書面によると口頭によるとを問うものではない。」と「派遣先における派遣社員の苦情処理の義務化」は存在していましたが、実際は派遣先ではなく、派遣元に寄せられるのが一般的でした。
2021年の改正では、労働時間や休日、休暇など派遣先に使用者責任のある事柄に関しての苦情の処理は派遣先が行うものとし、速やかな改善が求められるようになりました。
派遣法改正法後も引き続き派遣先に求められるもの
2021年の改正後に改めて強化されたルールについてご紹介しましたが、2020年の改正から引き続き、派遣先に求められる事柄について詳しく解説します。
派遣社員の待遇
派遣法改正の目的は「正社員と派遣社員の待遇の格差をなくす」ことです。
改正法では、給与や休暇、福利厚生などあらゆる面で両者の格差をなくすことを求めています。
給与や休暇面は主に派遣元が改善を行いますが、福利厚生面での改善は派遣先が行わなければなりません。
また、賃金格差の是正のため、派遣元に対し賃金などに関する情報を派遣元に提供することも義務化されています。
派遣社員のキャリアップの場の提供
派遣社員は正社員と比べ、業務に必要な研修や資格取得などキャリアアップの機会がないことが問題とされてきました。
2020年の派遣法改正では、派遣社員への必要な教育訓練を派遣元に課しています。
それに伴い、派遣元から依頼があれば、派遣先も正社員と同様の教育訓練の実施をしなければならなくなりました。
まとめ
コールセンター業務の特性上、運営スタッフの大半がアルバイト・派遣社員で占められています。
その中でも派遣社員の割合は他の業種と比べても高いのが大きな特徴です。
もともとセンターが求めるスキルを持つ人材が正社員よりも割安なコストで確保できることや離職に伴うスタッフの確保が容易であることが主な理由です。
ですが、20201年の派遣法改正により、派遣社員の待遇改善のためのさまざまな施策が施行されたことで、正社員と同様の扱いを求められることになりました。
また、3年以上の在職者を積極的に正社員として雇用することで、センターの定着率が高まり、離職者を減らすことにもつながります。
今後は、単純な窓口業務を行う労働者として扱うのではなく、センター運営を担う貴重な人材として、指導・教育に力を注ぐことが必要になってくるでしょう。
この記事の執筆者
コラボスブログ編集部
株式会社コラボスは、2001年に設立。現在、東京・大阪にオフィスを構えており、
960拠点以上のお客様へクラウドサービスを使ったCTIシステムを提供。
本ブログ記事サイトでは、様々なニーズを抱えたお客様のお役に立てるような情報を日々発信。
会社情報について詳しくはこちら