コールセンター運用に欠かせないCTIとナレッジマネジメントの関連性を解説

コールセンターの運営において、最も課題となるのは業務の効率化と離職率の低下ではないでしょうか。これらの原因はオペレーターのスキルの違いが大きく関係しています。そこでコールセンターでは、さまざまな研修を行いスキルの均一化を図る必要があります。ですが、人手不足から十分な研修時間が確保できないなど研修自体に課題を抱えるセンターも多く存在します。今回はオペレーターのスキルアップや業務の効率化など、コールセンターに多くのメリットをもたらすナレッジマネジメントについて詳しく解説していきます。


コールセンターの課題

コールセンターの主な課題は「離職率の解消」「業務の効率化」が挙げられます。オペレーターの退職理由の一つに「十分な研修が受けられず、スキルアップができなかった」ことがあります。
コールセンター業務はマニュアルに沿って対応するのが一般的ですが、イレギュラーが発生することも少なくありません。その際、正確な対応ができずクレームを発生させてしまうとオペレーターは極度のストレスを感じます。こうしたことが重なり、ストレスに耐え切れなくなったオペレーターが次々と退職してしまうのです。
従来の運用では、退職数に応じて新人を採用していましたが、専門的な研修にはかなりの時間を費やします。しかし、どれだけ時間を費やしても、全員にベテランの知識が細部までいきわたることは難しいでしょう。その結果、顧客満足度が下がり、多くの企業がその対応に追われることになってしまうのです。
こうした悩みを解決してくれるのが、ナレッジマネジメントです。
ナレッジマネジメントがコールセンター運営の課題である離職率の低下や、業務の効率化にどのように役立つのかを次の章で詳しく解説します。

ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメントとは、社内ナレッジ(知識)をマネジメント(管理)して、従業員一人ひとりが持つ知識や経験などを全社的に共有することです。具体的には、業務の効率化やサービスの向上、企業価値を高める取り組みを指します。たとえば、優秀なオペレーターが退職した場合、その人が習得していたスキルやノウハウ・スムーズに対応ができる回答は誰にも引き継がれずに埋もれてしまいがちです。特に、昨今はテレワーク導入など、働き方自体に変化が伴い、1つの拠点で運用していた時以上に共有が難しくなっています。そこで、特定の人物のみが持つスキルやノウハウを量産するのではなく、データベース化することで誰の目にも見える形で業務に活用できる仕組みを作ることが必要となるでしょう。

雇用環境の変化

多くに企業では、正社員として採用され1つの企業で終身雇用されるのが一般的とされていました。
同じ会社で長く勤務することで、各部署・各部門でさまざまな経験を通してスキルアップやキャリアップしていきます。しかし、働き方改革によって1つの会社の正社員として経験を積むのではなく、個人のライフスタイルに合わせた自由な働き方を認める風潮が生まれ始めています。その中で企業自体も事業を成功させるために、専門的な知識や技術を持つ、人材を採用する流れになってきています。

情報インフラの変化

インターネット・ITシステムが普及し、情報の収集管理と共有が最も重要視される時代になりました。それにより、さまざまな企業がデジタル化を進めています。ナレッジマネジメントのように、従来の手作業で行っていた業務や研修の自動化もこうしたデジタル化のひとつといえるでしょう。社内ナレッジ(知識)をデータベース化することにより、サービスの改善に向けたフィードバックをオペレーターがいつでも確認できることは、センター全体の品質向上などにつながります。

2種類の知識タイプ

ナレッジマネジメントとは、野中郁次郎(のなか いくじろう)という経済学者が中心となり、1995年に発表した「The Knowledge Creating Company」という論文から発展した経済理論です。
その中でも「暗黙知を形式知へ変換し、相互交換すること」が重要とされています。形式知は、言語化やグラフ、データや数値化できる知識になります。暗黙知は個人のみが理解している知識で、数値化や言語化が困難なスキルやノウハウを指します。
ナレッジマネジメントを理解するために、形式知と暗黙知の意味や知識タイプの違いについて詳しく解説します。

形式知

形式知とは、言語化された知識と客観的な知識を指します。具体的には、可能なかぎりの文章化やテキスト・グラフなど、他者に説明できるレベルの知識のことをいいます。形式知の典型として業務マニュアルなどが挙げられます。個人の経験や知識をルールやマニュアル化することで、社員全員で同じ知識を共有できます。

暗黙知

暗黙知とは、個人の経験や思考、レベルやノウハウといった目に見えない知識を指します。個人の経験やノウハウは、そのままでは他人と共有することはできません。しかし、経験やノウハウを誰でも理解できる言葉や数値やグラフ・テキストに落とし込むことで、マニュアル化することができます。
ナレッジマネジメントでは、個人の経験やノウハウを分かりやすいマニュアルに置き換えることで社員全員が共通の知識として共有することができます。こうしたことから業務効率化や生産性の向上が実現できると多くの企業から注目されています。

組織的知識創造理論

組織的知識創造理論はナレッジマネジメントの基礎部分となります。「SECI(セキ)モデル」と呼ばれるフレームワークをベースにしています。
「SECIモデル」は、「Socialization」(共同化)・「Externalization」(表出化)・「Combination」(結合化)「Internalization」(内面化)の頭文字を取ったもので、個人の経験や知識を組織全体で共有し、新たな価値を生み出すという考え方です。
このモデルには「共同化」「表出化」「結合化」「内面化」の4つのプロセスがあります。
それぞれのプロセスをご紹介します。

Socialization (共同化)

Socialization(共同化)は、個人の暗黙知をコミュニティ内で共有することです。また、「共同化」とは、たとえば営業のトークで使えるコツを文章化にして共有する段階になります。

Externalization (表出化)

Externalization (表出化)は、暗黙知を形式知に変換して表面化させることです。また、「表出化」とは、共同化された経験やスキルを形式知としてデータベース化する段階になります。

Combination (結合化)

Combination(結合化)は、形式知を組み合わせてより良くすることです。また、「結合化」のステージでは、表出化された形式知を組み合わせることで、業務やサービスの改善に有効活用します。

Internalization (内面化)

Internalization(内面化)は、形式知を吸収して自らのものにすることです。また、「内面化」のステージでは、情報の検索をした個人が、データベース化された形式知を自らの業務に活かして身につけます。

コールセンターにおけるナレッジマネジメントの必要性

ナレッジマネジメントをコールセンターで運用すると高い効果に期待できます。ここでは、企業として安定した経営・大きな収益につながるナレッジマネジメントの効果を3つ解説していきます。

離職率の高さ

コールセンターの現場では、日々、顧客からのさまざまな要望に応えなければなりません。中にはオペレーター一人では対応できない要望もあり、強いストレスを感じるオペレーターや社員も少なくありません。その結果、離職率が高くなる傾向にあります。
離職者が増えればその分、知識やノウハウが失われることになります。そこで、ナレッジマネジメントを的確に運用することで、オペレーターそれぞれの知識やノウハウをセンター全体の知識として共有することができます。その結果、オペレーターや社員の負担やストレス軽減になり離職率の低下につながります。
また、ナレッジマネジメントで自社の商品情報や対応方針、状況に応じた言い回しなどを事前に共有することで、顧客を待せることなく対応ができるため、センター全体の品質向上にもつながります。

初動に高い効果

コールセンターでナレッジマネジメントを活用することで、初動に高い効果が期待できるでしょう。
例えばインバウンド業務のような受電業務の場合、顧客の問い合わせの全件数の内20%の対応に問題がなければ、残りの80%も同様の対応で解決できるでしょう。これはビジネスフレームワークのひとつである「パレートの法則」の基づいた考え方です。この20%の対応方法をマニュアル化し、センター全体で共有することで顧客から寄せられるすべての問い合わせに早い段階で対応することが可能になります。

業務効率化することで生産性の向上

コールセンターの問い合わせ内容は上位約20%の項目が全体を占めています。約20%の問い合わせ内容に対して、「よくある質問集」などをマニュアル化し、オペレーターに共有することで対応時間が短くなります。また、対応時間が短くなればなるほど対応件数を増やすことができるので生産性の向上につながります。
たとえば、サブスクリプションなどであれば、アカウント登録や決済・退会方法、返品の仕方までもサイト内のよくあるQ&Aにまとめられています。顧客自身でQ&Aを確認しながら対応完了までできれば問い合わせ件数も減り、生産性の向上にもつながります。コールセンターでナレッジマネジメントを活用することで、埋もれていた個人の経験やノウハウを全体で共有できればこうした生産性の向上も期待できます。

ナレッジマネジメントを行う上で重要なツール

ナレッジマネジメントを活用するためには、基礎知識の理解とツールの活用が必要になります。コールセンターの規模が大きくなればなるほど、オペレーター一人ひとりの実力など個人差が生じやすくなります。しかし、ナレッジマネジメントにCTIシステムなどのツールをかけあわせることで認識のズレや非効率な運営は改善されるでしょう。
ここでは、効率的な運営を行うための必要な有効ツールを3つ解説していきます。

CRM

CRMとは、Customer Relationship Management(カスタマー・リレーションシップ・マネージメント)の略称になり、顧客情報を一元管理するためのツールです。
顧客管理を主としたCRMは、顧客のニーズやデータを蓄積・共有することで、可視化できる点が最大の特徴です。そして、顧客一人ひとりに対して質の高いサービスを提供することで顧客満足度を高め、コストを最小限に抑えながら顧客ロイヤリティをあげていくことができます。SECIモデルでたとえるなら、暗黙知を形式知に置き換え、共有する「共同化」と「表出化」の段階を担うツールがCRMになります。
CRMはナレッジマネジメントの土台ともいえる非常に重要な役割を担うツールといえます。

FAQツール

FAQとは、Frequently Asked Question(フリークエントリー・アスクド・クエスチョンズ)の略称で、「よくある質問」とも呼ばれる顧客から寄せられる代表的な質問と回答を一覧化したものです。
企業のホームページや登録サイトのページには、FAQコーナーが設けられているのをご存じの方も多いのではないでしょうか。このようなよくある質問コーナーを簡単に作成・管理ができるツールがFAQシステムです。FAQシステムはナレッジマネジメントの代表的なシステムになります。一般的によくある質問をマニュアル化するだけではなく、過去に発生したイレギュラー対象方法などもナレッジとして蓄積し、センターや顧客と共有することができます。さらに、FAQシステムとCRMを連携すれば、業務の効率化と生産性の向上も期待できるでしょう。

モニタリング機能

モニタリング機能は、通話に参加していない管理者などが顧客対応しているオペレーターの状況や通話内容を確認・把握できる管理機能になります。オペレーターでは対応困難な場合でも業務マニュアルなどを共有することで、スムーズな顧客対応ができるので顧客満足度の向上にもつながります。
また、イレギュラーが発生した場合でもモニタリング機能であればリアルタイムに内容を知ることができるので、さらに業務の効率化が可能となるでしょう。

ナレッジマネジメントをコールセンターに導入するメリット

小規模コールセンターだけではなく、中規模・大規模コールセンターでも業務量の見直しや人材確保においてナレッジマネジメントを活用する企業が増えてきています。コールセンターの場合、一般企業でナレッジマネジメントを活用するメリットよりも多くのメリットが得られるのが理由となります。ここでは、実際にコールセンターでナレッジマネジメントを活用したときのメリットを解説していきます。

研修のコストを削減できる

ナレッジマネジメントを活用すれば、コールセンターの大きな課題となる研修コスト削減ができるでしょう。従来コールセンターの研修では、蓄積された過去のノウハウやスキルを一気に詰め込んでいくスタイルが一般的でした。
ですが、具体的な専門研修に多くの時間を費やすことになり、本来の業務と並行して行うことが難しいといわれてきました。一方、ナレッジマネジメントを活用しているコールセンターでは、対応方法や言い回しなど経験豊富なトップオペレーターの知識をデータベース化することで、オペレーターが必要な時に必要な知識を現場で対応しながら確認できるようになります。
その結果、研修に費やす時間も削減され効率的な運用ができるでしょう。また、従来であればオペレーターが離職するとその分の知識やノウハウは損失になっていましたが、ナレッジマネジメント導入後は離職後もノウハウが受け継がれるのも大きなメリットといえるでしょう。

開発担当者とオペレーター間での認識の違い

専門的な商品やサービスを扱うコールセンターでは、開発担当者とオペレーター間での商品についての認識のズレが生まれることがあります。そのため、顧客に間違った案内をしてしまい。結果として顧客満足度の低下や業務効率の低下を招く要因になります。
その際、ナレッジマネジメントを活用することで、担当者とオペレーターが同じ知識を共有できるため、正確な情報をスムーズに案内することが可能になります。こうした損失を最小限に抑えることができるのもナレッジマネジメントの大きなメリットとえるでしょう。

個々のスキルに依存せずに対応品質の向上が期待できる

従来のコールセンターの運用の場合、新人オペレーターとベテランオペレーターにはスキルの格差がかなりありました。ベテランオペレーターの豊富な経験やスキルを新人オペレーターに引き継ぐ機会がないために、オペレーター個人のスキルの差が顧客満足度を低下させる原因にもなっていました。
ベテランオペレーターのスキルやノウハウをマニュアル化・共有できるナレッジマネジメントでは、新人オペレーターも経験豊富なオペレーターと同等のスキルを短期間で身につけることが可能です。その結果、新人とベテランの格差やスキルは縮まり、コールセンター全体の対応品質の向上ができるようになります。

ナレッジマネジメントをコールセンターに導入する際のポイント

ナレッジマネジメントを上手く導入するには、導入の意図と目的を全スタッフが共有することが重要になります。
ナレッジマネジメントは、個々のスキルやノウハウをデータベース化して社内全体で共有する取り組みですが、この取り組みを成功させるにはオペレーターはじめ、センター全体で取り組みことが重要になります。中には個人の経験やノウハウを全体に公開することに抵抗を感じるオペレーターも少なくありません。
こうしたオペレーターの知識を共有するためにも「なぜナレッジマネジメントを行うのか」「どういったメリットがあるのか」などを丁寧に説明し、納得してもらうことが重要になります。

CTIシステムを活用したナレッジマネジメント

CTIとはComputer Telephony Integration(コンピューター・テレフォニー・インテグレーション)の略称で、コンピュータと電話・FAXを統合する技術を指します。PBX(構内電話交換機)やCRMシステム(顧客管理システム)とCTIを連携させることで、より効率的な対応業務が可能となります。
さらに、ナレッジマネジメントと掛け合わせることで、顧客管理システムなどで解決できない、オペレーター教育の時短・効率化もカバーできます。その結果、オペレーターは対応中に発生したイレギュラーな問い合わせにもスムーズに対応ができ、顧客満足度の向上や1本あたりの対応時間削減による生産性の向上が可能となるでしょう。

まとめ

ナレッジマネジメントを導入することで、従来のコールセンター運営が抱えるさまざまな課題解決に役立つことを解説しました。ナレッジマネジメントは、組織全体の品質向上や教育に掛かる時間や手間を短縮は可能です。
しかし、コールセンターの本来の業務である電話応対自体の効率化を目的としていません。そこで、クラウド型CTIシステムと掛け合わせることで、オペレーターが受け持つ対応件数の軽減や顧客データの管理などの業務の効率化も同時に行うことが重要になってくるでしょう。
CTIシステムも以前は高単価で管理が難しいといわれていましたが、現在のクラウド型CTIであれば低単価で管理・運営もしやすくなっています。コラボスでは業種・センターの規模に合わせて柔軟な対応が可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事の執筆者

    コラボスブログ編集部

    株式会社コラボスは、2001年に設立。現在、東京・大阪にオフィスを構えており、
    960拠点以上のお客様へクラウドサービスを使ったCTIシステムを提供。
    本ブログ記事サイトでは、様々なニーズを抱えたお客様のお役に立てるような情報を日々発信。
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