人材育成とは何?考え方やフレームワーク、具体例を徹底解説
年々重要度が高まりつつある、企業における人材育成。今回はそもそも人材育成とは何なのか?という視点から、手法、経過のポイントまで細かく解説していきます。
人材育成とは?
人材育成とは、それぞれの企業が掲げる経営目標を達成するために、業績を上げることができる人材を育成することです。そのため人材育成のゴールは「企業の目標達成」になります。特に、従業員不足に悩まされている企業にとっては、この人材育成によっていかに一人一人のパフォーマンスを高めることができるかが、企業目標達成の大きなカギとなります。
人材育成と人材教育の違い
人材育成と似たような言葉で「人材教育」という言葉があります。人材育成は、先述の通り、企業の目標達成を目指し、企業の望む方向へ人材を育成していくことを指しています。一方、人材教育は「教育」なので、具体的な知識やスキルを教えることを意味しています。もちろん、人材の育成には教育以外にも経験で補うものもありますが、人材育成の手段の一つとして、人材教育という方法存在しているということです。
人材育成と人材開発の違い
またもう一つ、「人材開発」という言葉も存在していますが、こちらも「人材育成」とは少々意味が異なってきます。人材育成は人を育成することに焦点をおいている言葉ですが、「人材開発」は開発という言葉の通り、人材を経営資源ととらえ、本来の能力を発揮できるようにしていくという意味があります。そのため人材開発は、その人材の潜在能力を開花させるなどの人的資源を有効活用していくという意味が含まれます。
企業における人材育成の重要性
企業において、人材育成は年々重要度が高まっています。その背景としては大きく2点、「市場の均質化」「企業の人材不足」があげられます。
テクノロジーが進化していることにより、あらゆる業務の自動化が進んでいます。そのため単純に技術力や価格のみで、他社との差別化を図ることが難しくなっているのが現状です。そんな中で他社と差別化を図る、企業の競争力として重要視されているのが、「人材」となります。
さらにその「人材」も慢性的な人手不足に悩まされている企業が多いのが現状です。コロナの流行により、人手不足は一時緩和されたように見えましたが、コロナの5類感染症移行などもあり、経済が回復しつつあるため、また人手不足に悩まされる企業が増えることが予想されます。人手不足が深刻化すると、同時に人材獲得の競争が激化することが考えられます。その場合、今いる人材の成長を促し、生産性の向上、そして経営目標を達成していかなければならないため、より人材育成の重要度が高まってきているというわけです。
加速する人材不足
人材不足は年々加速しています。人材不足が加速していくと、今いる人材や数少ない新しい人材のスキルを一人一人確実に向上させていく必要があります。
人材育成の目標と課題について
ここからは、人材育成における目標と課題についてご説明していきます。
人材育成における課題
人材育成における課題の一つに「自律型の人材が育ちにくい」という点があります。
自律型の人材というのは、ここでは自らの考えを持ち、主体性をもって自身の仕事に取り組む人材を指します。自律型の人材を育成するには、そもそもの人材育成における「目標」をしっかりと立てておく必要があります。
またもう一つの課題として、「テレワーク普及によるコミュニケーションの減少」という課題もあげられます。元々、通常業務の忙しさなどから、人材育成が業務上後回しにされる傾向がありました。そこにコロナ禍などが重なり、テレワークが普及したことによって、直接対面でコミュニケーションをとる機会が格段に減ったことから、より後回しにされたり、コミュニケーションの取りにくさからなかなか育成が進まないといったことが発生しているのが現状です。
人材育成の目標の立て方
先の項目で、自律型の人材を育成するにはそもそも目標をしっかり立てる必要があると記載しましたが、人材育成の目標とはどのように立てればいいのでしょうか。次の3つのポイントを押さえて目標立てていきましょう。
①定量目標の設定
これは人事育成の評価を行う観点で欠かせないポイントです。目標の内容が定性目標に偏らないようにすることが重要となります。
②明確な期日の設定
設定した目標をいつまでに達成するのか、明確な期日を定めることが重要です。その期日をもとに、人材育成の計画を立てていくことが重要なポイントです。
③会社やチーム目標を意識
目標を立てる際は、会社やチームの目標を意識した内容にしてください。先の課題で述べたように、人材育成自体が後回しにされないように、会社、チームの目標と人材育成がしっかりと連携している状態を作り出すことが重要なポイントとなります。
人材育成の手法は3種類
ここからは、具体的な人材育成の手法について3種類に分けて説明していきます。
OJT
手法の一つ目は、OJT(on-the-job training)になります。
OJTとは、上司や先輩社員などが指導を行う人材育成の手法になります。実際の業務を通してスキルやノウハウを身につけていくため、接客指導や営業指導、技術的な作業の指導に対して効果的な手法といえます。また、OJTを通じて、社内の上司や先輩と密にコミュニケーションをとることができる点もポイントです。
ただし注意すべき点としては、指導者のスキルによって効果に差が出るため、指導者に対してもフォローアップを行うことが必要です。
Off-JT
手法の二つ目は、Off-JT(off-the-job training)になります。
Off-JTはOJTとは違い、業務から一時的に離れて行う教育訓練のことを指します。指導者のスキルによる差が生まれにくく、知識やノウハウを体系的に習得できる点もポイントです。また、オンラインなどで実施しやすいなどのメリットもあります。
自己啓発
手法の三つ目は、自己啓発(SD Self Development)になります。
自己啓発は、自らスキルの取得や向上を図る方法を指しています。業務の一環で行うものではなく、自らスキルを取得しに行く必要があるため、自己啓発を促す目的で、会社として費用補助や、制度の拡充を実施している会社もあります。
人材育成の考え方と計画方法
ここからは、人材育成の考え方とその計画方法についてご説明していきます。
手順①人材育成の考え方をおさえる
まずは以下のポイントで人材育成の考え方を抑えておきましょう。
1、長期的な視線で考える
2、会社の育てたい人物像を考える
3、人材育成の方法は改造別に考える
上記のポイントをおさえた上で、人材育成の計画を立てていきましょう。
手順②課題の明確化
自社の状況を分析することで、次第に課題が明確化されていきます。その中には、人事的観点からアプローチが難しい課題もあると思います。そのため、3つの課題(戦略、組織、人材育成)に分類し、自社の課題を明確化していくことが重要です。
手順③自社の戦略、目指す方向の明確化
上記の手順で課題が明確化されたら、自社の戦略や方向性と照らし合わせて本当に解決すべき課題なのかどうかを考える必要があります。その結果、重要である、取り組むべきであると判断された場合、重点的に行ってく必要があります。
手順④課題に対しての解決方法の検討
最後の手順として、課題に対して合致する解決方法を考える必要があります。解決方法は研修や座学に限らず様々な観点から検討する必要があります。人事アプローチ可能な最も効果のある手法を検討していきましょう。
新入社員の人材育成
新入社員を育てるには、まず自社の経営理念やビジネスマナー、組織人としての心構えを理解してもらうことが大切です。また、最近の離職率の増加を考えると、社員の帰属意識を高めることも重要でしょう。
自社への理解を深める
新入社員には、まず自社についての理解を深めてもらうことが重要です。具体的には以下の内容を学びます。
- 経営理念
- 自社の歴史と未来のビジョン
- ビジネスモデル
- 組織構造
- 業界の基礎知識
全体像を理解することで、今後の経験が「どの部分に関する話か」と認識しやすくなり、知識も定着しやすくなります。
心構えやビジネスマナーを学ぶ
学生時代の習慣が残っている新入社員には、組織人として必要な心構えやビジネスマナーを教えます。具体的なテーマは以下の通りです。
- 挨拶や表情
- 動作や態度
- 身だしなみ
- 電話応対
- 生活習慣
- 敬語や言葉づかい
- 名刺交換
- ビジネスメール
「なぜこれが大切なのか」を説明することで、心構えやマナーを自分のものにしやすくなります。
業務に必要な知識とスキルを身につける
基本的な知識を学んだ後は、実際の業務を通じてスキルを習得します。集合研修も役立ちますが、OJTやメンター制度を活用した実践的な学びが特に効果的です。
自分の役割を自覚させる
入社後は新入社員が多くの知識を学ぶため、自分の役割を理解するのが難しいことがあります。そのため、「自分が組織から何を期待されているのか」や「この組織でどう成長したいのか」を考える機会を作ります。
自分の役割や目標が明確になることで、成長が早くなり、モチベーションや帰属意識も高まります。
中堅社員の人材育成の方法
中堅社員(入社4年目以降)は、業務に慣れて独り立ちし、部下や後輩を持つ頃です。この段階では、組織の中心的な役割を果たす自覚や、育成担当者としてのスキル向上、管理職候補としてのマネジメントスキルの向上が求められます。
組織の中枢を自覚させる
中堅社員には、自分たちが組織の中核を担う重要な存在であることを再認識させる必要があります。業務に慣れ、成果を上げる一方で、「慣れ」がマンネリ化を招き、効率やモチベーションの低下につながることがあります。また、新入社員に比べて育成の機会が減少することも、この傾向を助長します。
そのため、彼らが組織の重要な部分を占めていること、実績を上げる役割や新人を指導する役割を担っていることを自覚させることが大切です。具体的な方法として、役員や管理職による研修や個別面談を通じたキャリアプランの確認、ジョブローテーションなどがあります。
育成担当者としてのスキルを向上させる
中堅社員は、部下や後輩の育成を担当する機会が増えます。以下のような育成方法が効果的です。
- 部下育成をテーマにした研修やeラーニングの受講
- 得意分野での社内研修の講師経験
- メンターの役割を経験
- OJTでトレーナーの役割を担う
- OJT研修を受講
メンターやトレーナーを任せる際は、育成担当者の負担が増えないように注意が必要です。周囲からのサポートや上司との定期的な面談を通じて、負担を分散しましょう。
マネジメントスキルを身につける
中堅社員は管理職候補としての期待もされます。そのため、マネジメントスキルを身につけることが重要です。プロジェクトリーダーを任せることで、実際にマネジメントの経験を積むことが効果的です。補助的な役割を経験させたり、相談役を設けたりする配慮も必要です。
マネジメントには以下のスキルが必要です。
- リーダーシップ: 指導力や統率力を持ち、人や組織を動かす能力。
- 目標管理能力: 自分や他者を目標達成に導く能力。進捗管理やスケジュール調整も含む。
- 部下育成力: 部下の成長を支援し、仕事で成果を出す能力。
- コミュニケーションスキル: 情報を正確にやり取りする能力。ティーチングやコーチングスキルも含む。
- ロジカルシンキング: 原因と結果を正確に捉え、適切な施策を検討する能力。
- クリエイティブシンキング: 固定観念を捨て、発想を広げる能力。
- クリティカルシンキング: 本質を見極めるために疑問を持って考える能力。
中堅社員の育成を担う上司は、これらのスキルが現場で生かされるよう、実際の課題や経験と結びつけながら指導します。また、研修やeラーニングを通じて学びを補強することも効果的です。
管理職の人材育成
管理職は、企業の理念や経営方針を理解し、目標を達成するために社員を効果的にマネジメントする重要な役割を持っています。管理職の育成は、マンツーマン指導よりも、実際の業務や研修、自己学習を通じて行われることが多いです。
管理職の育成において大切なポイントは、以下の3つです。
経営戦略や組織について学ぶ
管理職は、組織全体を見渡す視点や経営的な考え方が求められます。具体的には、売上や利益、コストなどの数値、組織の構造や人員配置、業界全体の動向、競合他社の情報を理解する必要があります。育成の方法としては、外部研修や経営層による研修、指定された書籍を使った学びが有効です。
社員を正しく評価し育成する力を高める
社員の評価と育成は、組織の成長に欠かせません。管理職は、この二つの役割を担うため、もし「管理職が人事評価制度を理解していない」場合には、人事評価研修を実施することが重要です。
コミュニケーションスキルを磨く
最近、ハラスメント問題が注目されているため、多くの部下を持つ管理職は、コミュニケーションスキルの確認が必要です。コーチングやティーチングなど、管理職に必要なスキルは多岐にわたるため、定期的に学び直す機会を設けることをお勧めします。
人材育成施策でよく使われるフレームワーク
ここからは、人材育成施策でよく使われているフレームワークをご説明します。
①経験学習モデル
経験学習モデルは、人がどのように経験から学んでいくのかを表したものです。人は経験しただけでは学ぶことはできず、振り返り、その経験から何を学んだのかを考えることで学習していきます。経験学習モデルは、人材育成の手法における、OJTとOff-JTをつなぐ考え方として取り入れられることが多いです。
②ギャップ分析
ギャップ分析とは、目指すべき姿と自身の現状のギャップを明確にし、そのギャップをどのように埋めていくかを分析していくことを指しています。人の能力を開発していくことは、あるべき姿と現在の姿を埋めていくことが重要です。例えば、プログラミングができるようになるには、その姿に向けてプログラミングができない自分自身を変えていかなければなりません。そのギャップを埋めていくことが重要なのです。
③「7:2:1」モデル
人材育成の基本的な考え方として、「7:2:1」モデルに集約されています。「7:2:1」モデルとは、経験7割、人間関係2割、Off-JT1割であるといわれています。そのため、人材育成の施策は、経験を重視しつつもメンタリングやOff-JTを組み合わせた施策を行うことが重要といえます。
人材育成の成功事例5選
人材育成は、企業の成長や競争力を高めるために欠かせない要素です。さまざまな業界で成功を収めている企業の事例を通じて、効果的な育成方法やアプローチを探ります。特に、T型人材の育成や専門職型人材の育成、そして最適な育成スキームの選択に焦点を当て、実際の取り組みを具体的に紹介します。
T型人材の育成
ある企業では、T型人材の育成を重視しています。T型人材とは、横の部分が幅広い知識を、縦の部分が深い専門性を持つ人材を指します。この企業では、将来有望なエンジニアに対して、製造やマーケティングなどのさまざまな部門での経験を積ませています。
これにより、エンジニアは事業や商流を理解し、お客様のニーズに応じた製品を設計できるようになります。また、自己学習を促進するために書籍を読むことも奨励しており、視野の広いエンジニアが育成されています。
専門職型人材の育成
製薬業界では、研究職の育成が特に重要です。新薬の開発が難しくなっている中で、研究者を海外に留学させ、場合によっては博士号を取得させています。また、学会発表やベンチャー企業との交流を推進し、研究者の視野を広げています。
OJTトレーナー制度の導入
ある企業では、新入社員に1年間OJTトレーナーをつけ、必要な知識やスキルを伝承しています。この期間に信頼関係を築くことで、特に女性のライフステージに配慮した働きやすい環境を実現しています。
自他推薦による公募制
別の企業では、自他からの推薦による管理職公募制を導入し、意欲の高い人材を早期に発見しています。この制度によって、短期間で新しい管理職が誕生し、管理職登用にかかるコストも削減されました。
階層別教育の実施
また、ある企業では、新人から幹部まで各階層に応じた教育を行っています。社内外の研修やOJTを通じて、自己啓発計画に基づく資格取得や研修の助成を実施しています。その結果、新卒入社した社員の離職者をゼロにし、売上や利益も過去最高を記録しました。
人材育成のことならコラボスにお任せ
コールセンターにおける人材育成として、ご活用いただけるツールはいくつかあります。
一つは電話システムに搭載されていることが多い、モニタリング機能になります。新人のオペレーターとお客様との会話先輩社員がモニタリングすることで、現場指導にご活用いただけます。また音声認識の機能も、人材育成にご活用いただけます。自身の会話の文字起こしされた内容を確認したりすることで、自身の業務改善や、オペレーターの評価を助ける役割もあります。
まとめ
本記事では人材育成が企業においてどの程度重要視すべき事項かということから、育成の手法や計画を立てる際のポイントなどをご説明してきました。年々人材育成の重要性は高まっています。今一度、自社の課題を精査し、解決すべき課題に対してしっかりアプローチしていきましょう。
この記事の執筆者
コラボスブログ編集部
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