AI化で変わるコールセンターの未来 業務効率を高める活用ポイントを解説
AIの登場によりデジタル技術が急速に発展し、社会や暮らしが飛躍的に便利になりました。中でも音声認識システムは通信や医療、行政サービスなど企業のさまざまなシーンで欠かせない存在になっています。
コールセンターの業務にも音声認識システムを活用したシステムが次々と導入され、業務の効率化や品質向上に役立てられています。
今後ますます利便性が高まると期待されている音声認識システムの特徴やメリット、業務効率を高める活用ポイントなどを詳しく解説します。
音声認識とは
音声認識とはコンピューターに音声を自動認識させる機能のことをいいます。人間がコンピューターに話しかけることで、言葉を文字に変換したり、内容の合った回答をさせたりすることができます。
音声認識自体は1970年代から研究が行われていましたが、現在のような高精度なシステムが誕生したのは2000年に入ってからです。AI技術を活用することで、スマートフォンやスマートスピーカと呼ばれる機器に話しかけるだけで、あらゆる操作が自動で行えるようになりました。
・音声認識の仕組み
人間の音声に反応して、機械が自動で操作を行えるのは「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれるデジタル技術で人間の「声の情報」と「言葉の情報」を組み合わせて、AIが判断し状況に応じた操作を行っているからです。
音声認識システムにはあらかじめ、声の情報を解析した「音響モデル」と言葉の意味や文法を解析した「言語モデル」と呼ばれるものが組み込まれています。機械に話しかける「音声モデル」が何の声なのかを解析します。次に「言語モデル」が言葉の意味を解析し、正しい答えを導き出します。その答えの通り操作を行うことで、会話をしたり家電を動かしたりすることができるのです。
音声認識システムを導入している主な業界
音声認識システムを導入している企業は数多くありますが、その中でも特に実用化が進んでいる業界と実用例を3例ご紹介します。
・通信・情報
人の声を認識し、質問に答える・音楽をかけるほかに、インターネット接続された周辺機器を操作することができるサービスが続々登場しています。有名なサービスにアップルの「Siri」グーグルの音声検索やスマートスピーカーと呼ばれるアマゾンの「アレクサ」などがあります。スマートスピーカーは、スピーカーに話しかけることで、部屋の電気を付けたり、その日の予定を読み上げたりする機能を持っています。
・医療
医療現場では患者の健康状態や看護情報など、さまざまな記録の作成が必要になります。こうした記録業務は時間が掛かるため、医師や看護師の大きな負担になっていました。そこで、音声認識システムを活用し、音声で体温や血圧、病名など記録できる電子カルテを開発。業務の効率化やタイムリーな情報共有が行えるようになりました。
・行政
国会や地方自治体などの会議議事の作成に音声認識システムを利用することで、作成に掛かる業務時間の短縮に役立てられています。
議事録は通常、ICレコーダーなどで録音し、その音声を文字に起こしながら作成されます。議事録は公的文書として扱われるため、正確な記述が求められます。そのため、作成には時間が掛かるのが一般的でした。ある自治体が音声認識システムによる議事録作成サービスを導入したところ、年間、6,000時間掛かる作成業務が約4割程度の削減が見込まれることが分かりました。
コールセンターで音声認識システムの導入が進んでいる理由
音声認識システムはコールセンターでも積極的に導入が進んでいます。その最も大きな要因が「人手不足による業務量の増大」です。従来のコールセンターはオペレーターと呼ばれるスタッフが電話で顧客からの問い合わせに対応することがほとんどでした。
ですが、人手不足から満足な対応が難しくなっており、オペレーターの大きな負担になっているほか、センターの品質維持の大きな課題にもなっています。
これらの問題の解決策として、音声認識システムが注目されているのです。
コールセンターが主に音声認識システムに期待していることを3点ご紹介します。
人手不足による呼損を防ぎたい
音声認識AIボットを活用すれば、コールセンターやヘルプデスクなどの1次対応の自動対応が可能になります。問い合わせ内容の確認や簡単な質問であれば、FQAから最適な回答を自動で伝えることもできます。AIによる判断が難しい質問は専任のオペレーターへ転送させることができるので、業務の引継ぎもスムーズといえるでしょう。
初期対応を自動で行えるので、休日や深夜など24時間365日問い合わせに対応できます。他にも音声認識システムを活用することで、手間のかかるプッシュ操作が不要になるため、顧客の利便性が高まるのはもちろん、セルフ化が進むことで呼損率の低下も期待できます。
応対品質を安定させたい
AIボットは、蓄積された大量のデータを基にパターン学習を行う機能を持っています。さまざまな問い合わせに対して最適な対応方法をボットが見つけ出すことができるのが音声認識システムのメリットといえるでしょう。業務経験の浅いオペレーターと比較しても一定の品質を保つことができます。
音声認識システムは、通話内容を文字に起こすことができます。オペレーターの通話記録をテキスト化することで、細かなクセや問題点が明確になります。自身では気づけない課題に気づくことで応対スキル向上に役立てられるので、センター全体の品質向上にもつながるでしょう。
顧客満足度を向上させたい
現在、AIボットの主な業務にセンターの1次対応が挙げられます。顧客の話す内容をAIが判断し、FQAなどのデータから最適解を導き回答することができます。
ですが、コールセンター以外の業界では、音声認識システムの分析システムに注目し、さらに1歩踏み込んだ活用方法を利用しています。例えば、音声認識システムの感情分析をカウンセリングなどの現場で役立てています。これは人の言葉から喜怒哀楽を分析、いらだちや怒りの感情を素早く察知し、カウンセリングに当たるというような業務が行われています。
将来的にコールセンターに寄せられるさまざまな声の感情を分析し、クレーム対応などにも応用できるようになるでしょう。
AIの登場で話すことが苦手に感じる顧客が増えた
SNSの普及により電話を掛けることに抵抗を感じる人が以前に比べて増えています。
全国の20代から60代を対象にした調査によると全体の4割が「電話恐怖症である」と回答しました。
電話に出ることはもちろん、掛けることにもストレスを感じることが分かりました。
また、同調査によるとメッセージアプリを使うようになってから、電話の回数が減ったとの回答も得られました。
AIによる音声認識・コミュニケーションサービスを利用したことがある人が3割
2020年5月25日にNTTデータ経営研究所が実施した「第2回消費者アンケート結果速報」の中で、AIによる音声認識・コミュニケーションサービスを利用したことがありますか?との質問に対し。「利用したことがある」と回答が3割に上りました。年齢別では10代~30代が30%以上、40代~60代でも約20%に人が「利用したことがある」と答えました。
2020年の調査では40%以上のコールセンターが音声認識システムを「導入している」と回答
一般社団法人日本コールセンター協会が行った「2020年 コールセンター企業 実態調査」で「チャットボット業務に対応している」と回答した企業は全体の42.0%でした。その他の音声認識システムの利用率は不明ですが、チャットボット以外のシステムを利用している企業も少なくないことが調査結果からもうかがえます。
音声認識システムのメリット
音声認識システムは現在も進化を続けています。コールセンターが音声認識システムに期待していること以外にもさまざま機能により、業務効率の向上や品質維持、顧客満足度への貢献が可能になるでしょう。
ここでは音声認識システムの導入で得られるメリットや将来を詳しく解説します。
自動音声対応で業務の効率化を実現
現在、コールセンターやヘルプデスクの1次対応に活用されているAIボットは、顧客の問い合わせに対して適切な回答を行うだけでなく、会話内容をテキスト化できるのが大きなメリットといえるでしょう。
その機能を利用し、センター全体の業務の効率化が実現できます。従来のコールセンターでは、SVがオペレーターの通話を音声でモニタリングするのが一般的でした。ですが、音声によるモニタリングでは、1度に1人のオペレーターのモニタリングしか行えませんでした。
音声認識システムなら、通話をテキスト化し1度に複数のオペレーターの通話状況をモニタリング、スムーズなエスカレーションが可能になります。また、適切なタイミングでSVが通話に参加することで、クレームの防止にも役立ちます。
こうしたリスク回避が可能になることで、業務中の無駄を省き、効率の良い運営体制を整えることができます。
蓄積されたデータから最適な回答を提案
音声認識システムに利用されているAIは膨大なデータを解析し学習する性質を持っています。FQA以外にも過去の通話内容から、状況に応じた回答を自動で提案します。常に最新の情報を取り入れアップデートを繰り返すことで、最適な回答を導き出すことが可能です。マニュアル化されたトークスクリプトでは対応しきれない質問にも学習を繰り返すことで対応ができるようになります。
チャット形式での対応が可能
人の呼びかけに対して音声での返答以外にも、テキストによる対応もできる音声認識システムは、チャット形式での問い合わせにも対応が可能です。電話が苦手な顧客やメッセージアプリのようなチャット形式のやり取りに慣れている顧客にとっては、ストレスなく利用することができるでしょう。リアルタイムでテキストのやり取りを行うので、待ち時間もなく、いつでも好きな時に手続きや欲しい情報を手に入れることができるので、顧客満足度の向上にもつながります。
コールセンターに導入すべき音声認識システム
音声認識システムを実際に導入する際のポイントは、使い勝手の良さや運用サポート面の充実の2点です。導入後、社内の担当者が運用・管理ができない・オペレーターがシステムを使いこなせないなどのトラブルは、そのまま顧客側にとって不利益を与えることになりかねません。
スムーズな運用を行うためにも以下のようなシステムを利用することをおすすめします。
すでに導入実績のあるシステム
導入実績のあるシステムは、運用に関する知見もあり、システムトラブルにも強いという特徴があります。新規に開発されてシステムは、運用途中に不具合が生じる・システムトラブルの解決までに時間が掛かるなどさまざまなリスクをはらんでいます。
すでに運用から一定期間を過ぎたシステムであれば、不具合も解消されており、万一トラブルが生じた場合でもスムーズなサポートを受けることができるでしょう。
直感的に操作が可能なシステム
日々、システムを利用するオペレーターやシステム担当者が使いこなせないシステムは、かえって顧客に迷惑を掛けることになります。
高機能を搭載したシステムであっても、操作手順が複雑なものはその機能を活かすことはできません。業種やセンターに必要な機能が揃っていることも重要ですが、初めてシステムを使う人が直感的に操作できるシステムを導入するようにしましょう。
具体的な方法として、デモ版や体験版を利用し、操作方法や動作確認をおこなった上で実際に導入するようにしましょう。
まとめ
2000年以降、音声認識システムは飛躍的に進化を遂げています。人手不足の解消や業務の効率化など企業の抱える問題を解消するツールとして活用の場が広がっています。
コールセンターの現場でも業務負担の軽減や顧客満足度の向上など、さまざま課題の解決に活用されています。問い合わせの1次対応やチャットボットによるテキストでのやり取りのほかにも、センター内の品質維持・向上にも役立てられています。
既存のシステムでは改善が難しい課題も音声認識システムを活用することで、改善されることはもちろん、新たなビジネスチャンスを掴むきっかけにもつながります。
この記事の執筆者
コラボスブログ編集部
株式会社コラボスは、2001年に設立。現在、東京・大阪にオフィスを構えており、
960拠点以上のお客様へクラウドサービスを使ったCTIシステムを提供。
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