2025/10/1
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マネジメント
コールセンターのCPC削減&サービス品質維持の両立ガイド

コールセンター運営において、コスト削減は常に重要な課題ですが、同時に顧客満足度や企業のブランドイメージを損なわないサービス品質の維持も不可欠です。特にCPC(コスト・パー・コール)を削減する過程で、安易なコストカットは応対品質の低下やオペレーターの離職を招き、結果的に顧客体験を損なうリスクがあります。本記事では、この二律背反と思われがちなCPC削減とサービス品質維持を両立させるための具体的な方法と注意点について解説します。
目次
コールセンターにおけるCPCの基礎知識
CPC(コスト・パー・コール)とは?
CPC(Cost Per Call:コスト・パー・コール)は、コールセンターで1件の電話応対にかかる平均コストを示す経営指標です。これは、コールセンター運営の効率性を評価する上で非常に重要なKPIの一つとされています。
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CPC = コールセンター運営の総コスト ÷ 電話での応対件数
総コストにはオペレーターやSVなどの人件費、通話料、システム利用料、教育費、オフィス賃料などが含まれます。CPCが高すぎると効率が悪く、低すぎると品質低下や離職率上昇を招く可能性があります。
コスト構造
コールセンター運営費の大部分は人件費で、全体の約3分の2を占めます。採用・研修・給与だけでなく、管理者や教育担当のコストも含まれます。次に大きいのは通話料や回線利用料などの通信費。さらに、CTIやCRMといったシステム費用、マニュアル作成や研修にかかる教育コスト、オフィス賃料や設備費などのインフラ費用が続きます。
このようにコストは多層的であり、削減を考える際には「どの項目に無駄があるのか」「どこを効率化できるのか」を明確にする必要があります。
CPCの一般的な目安や業界別参考値
コールセンターのCPCに一般的な平均値や目安は存在しません。これは、コールセンターの業務内容(インバウンド、アウトバウンド、テクニカルサポートなど)、問い合わせの複雑さ、通話時間、必要な専門知識レベル、運営方法などによって大きく変動するためです。例えば、専門知識を要するテクニカルサポートではCPCが高くなる傾向にあり、予約受付など定型的な業務では低くなる傾向があります。各企業は自社の状況や業務内容を踏まえ、過去の推移を記録しながら適切な目標値を設定することが重要です。
CPC削減のための有効な施策
業務自動化(AI・IVR・ボイスボット等)
AI、IVR(自動音声応答システム)、ボイスボットなどの業務自動化ツールを導入することは、オペレーターの対応が必要な入電数が減り、CPH(1時間あたりの処理件数)の増加やAHT(平均処理時間)の短縮に繋がり、結果的に人件費の削減に貢献します。
IVR
入電時に自動音声ガイダンスを流し、顧客のプッシュ操作や音声認識で問い合わせ内容を振り分け、適切な担当者へ繋いだり、自動音声で解決できるFAQへの案内が可能
ボイスボット
AI技術を用いて顧客との電話での会話を自動化。簡単な問い合わせはボイスボットが完結させ、複雑な問い合わせのみをオペレーターに引き継ぐことができる。
→AHT(平均処理時間)短縮、CPH(処理件数/時間)向上に寄与
FAQ・チャットボット強化
WebサイトにFAQコンテンツを充実させたり、チャットボットを導入したりすることで、顧客の自己解決率を高めることができます。これにより自己解決に至らなかった顧客のみが電話で問い合わせるようになるため、オペレーターはより複雑な案件に集中でき、全体の効率が向上します。
FAQ
頻繁に寄せられる質問とその回答を分かりやすく整理して掲載することで、顧客が必要な情報を迅速に得られるようにします。
チャットボット
顧客がテキストで質問を入力すると、設定されたシナリオやAIの自動学習機能に基づいて自動で回答します。AI搭載型チャットボットであれば、より自然な会話形式での対応が可能となり、顧客満足度の向上にも寄与します。
オペレーター教育+AI活用によるスキルアップ
オペレーターのスキルアップは、CPC削減とサービス品質維持の両面で重要な施策です。各オペレーターの対応能力が高まることで、平均処理時間(AHT)が短縮され、少ない人数でより多くの問い合わせを処理できるようになり、人件費の最適化につながります。
充実した研修プログラム
新人オペレーター向けに、実務に近いケーススタディを導入し、業務内容やマニュアルを習得する時間を十分に設けることで、不安を軽減し、早期離職を防ぎます。
AIを活用した教育
音声認識サービスを導入し、オペレーターの通話記録を自動でテキスト化することで、フィードバックの効率を高めます。AIが不適切なキーワードの使用や、対応の改善点を自動で特定し、管理者は個別のオペレーターに対して具体的な指導を行えるようになります。これにより、経験の浅いオペレーターでも迅速にスキルアップし、的確な対応が可能となります。
マニュアルのアップデート
対応マニュアルを定期的に見直し、最新の情報やよくある事例を反映させることで、オペレーターの対応時間を短縮し、一次解決率の向上に繋げます。
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オペレータの通話録音から自動分析。オペレーターの評価作業の時間短縮!:通話録音解析AIツール「UZ」
リモートワークとオフィスコスト削減
リモートワークの推進は、コールセンターの固定費である地代やオフィス代、光熱費の削減に直結します。ただし導入の際は、セキュリティ対策の徹底や、オペレーターのコミュニケーション・モチベーション維持のための工夫も不可欠です。
オフィススペースの最適化
オペレーターのテレワーク化を進めることで、必要なオフィス面積を最小限に抑え、賃料や維持費を削減できます。
クラウド型システムの活用
クラウドPBXやクラウドCTIなど、クラウド上で機能するシステムを導入することで、場所を選ばずにオペレーターが業務を行える環境を整備します。
助成制度の活用
地方自治体などが実施しているリモートワーク関連の助成制度を活用することで、初期導入コストをさらに抑えることも可能です。
通信・システム料金の見直し
通信コストやシステム利用料は、継続的に発生する費用であるため、定期的な見直しが重要です。また、コスト削減だけでなく、より高性能なシステムやサービスへの移行の機会ともなり、結果的にサービス品質向上に繋がる可能性もあります。
通話プランの最適化
自社の通話量や通話時間の実態に合わせて、最適な料金プラン(秒単位課金、定額制など)を選択することで、通話料を削減できます。複数の通信会社から見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。
システムの費用対効果分析
導入しているコールセンターシステムやAIツールの利用状況を定期的に評価し、費用対効果が見合わない場合は、より安価で効率的なシステムへの切り替えを検討します。また、不要な機能の契約を見直すこともコスト削減に繋がります。
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サービス品質維持とCPC改善のバランス
品質低下を避けるための注意点
CPC削減に注力するあまり、サービス品質が低下することは避けなければなりません。品質低下は顧客満足度の低下、ひいては企業イメージの悪化や顧客離れに繋がります。特に以下の点に注意が必要です。
無理なAHT(平均処理時間)短縮の強要
オペレーターに通話時間や後処理時間の短縮を過度に強いると、顧客対応が疎かになり、問題解決に至らないケースが増える可能性があります。
人件費の過度な削減
給与の引き下げや人員削減は、オペレーターのモチベーション低下、ストレス増加、離職率の上昇を招き、結果的に応対品質の不安定化を引き起こします。
自動化の過信
AIやチャットボットなどの自動化ツールは強力な手段ですが、複雑な問い合わせや感情的なサポートが必要な場合には、人間のオペレーターによる丁寧な対応が不可欠です。完全に自動化に頼りすぎると、顧客の不満に繋がりかねません。
応対品質向上と効率化を両立するために
サービス品質を維持しつつ効率化を進めるためには、「成果品質」と「応対品質」の両面を高めることが重要です。
成果品質
応答率や一次解決率、成約数などのKPI達成を目指す運用マネジメントを徹底します。オペレーターのパフォーマンスを高め、センター全体の生産性を管理することで実現できます。
応対品質
オペレーターの話し方、態度、音声品質など顧客対応の質を評価します。WOWOWコミュニケーションズが提唱する「正確性、迅速性、柔軟性、共感性、安心感、好印象」の6つの要素を指標に、顧客の真の満足度を高める取り組みが有効です。
AIによるモニタリングとフィードバック
音声認識サービスを活用し、オペレーターの応対内容を自動評価・分析することで、個々の強みや改善点を特定し、効率的なフィードバックを可能にします。これにより、応対品質の属人化を防ぎ、センター全体の品質を均一に保ちながら向上させることができます。
離職率・従業員満足度への配慮
オペレーターの離職率が高いコールセンターは、常に採用・教育コストがかかり、応対品質も安定しません。従業員満足度を高めることは、結果的にCPC削減とサービス品質維持に繋がります。
適切な評価制度と報酬体系
オペレーターが自身の努力と成果を正当に評価され、納得できる報酬を得られる仕組みを構築することで、モチベーションを維持し、定着率を高めます。
働きやすい環境整備
短時間勤務、フレックス勤務、リモートワークなど、多様な働き方に対応することで、ライフステージの変化に合わせた柔軟な勤務を可能にし、離職を防ぎます。
メンタルヘルスケアとコミュニケーション
クレーム対応などによるストレスを軽減するため、定期的な面談や、スーパーバイザーによるきめ細やかなサポート体制を整え、心理的安全性の高い職場環境を提供します。
CPC削減・品質維持に成功した事例紹介
具体的な成功事例をご紹介します。
AI・システム導入によるコスト削減事例
倉庫サービス業:チャット/ボイスボットで予約自動化
トランクルーム予約の電話応対において、チャットボットとボイスボットを導入し、空き状況照会から仮予約までを完全自動化。電話応対の工数削減とFAQでの即時解決による顧客満足度向上を実現しました。
医療/介護施設の厨房業務受託業:営業時間外対応をボイスボット化し人件費50%削減
営業時間外の一次受付対応にボイスボットを導入し、お客様満足度向上と人件費50%削減を達成。人とボイスボットの協業により低コストで24時間対応を実現。
保険業➀:AIによるFAQ最適化で応答率11.3%改善
人材配置の検討やFAQの最適化を目的にAIを導入。問い合わせ内容の自動判定、最適な回答提示、FAQの自動作成、人員配置・シフトの自動作成などにより、入電数を減らし、センター全体の応答率を11.3%改善。
保険業➁:LINEチャットボットで保険金請求を3分に短縮
ペット保険の保険金請求手続きをLINEチャットボットで自動化。従来2週間かかっていた手続きを約3分で完了できるようにし、顧客とオペレーター双方の負担を軽減。月間2.5万人が利用し、直接請求の60%近くがLINE請求に移行。
教育・人材施策による改善
通信業:研修見直しで退職率7.5%改善
オペレーターの離職率と欠勤率の高さが課題でしたが、入社から上級スキル付与までの育成プロセスを洗い出し、退職や勤怠不良の原因となるトリガーを特定。導入研修にケーススタディを追加したり、チームミーティングを定期開催したりすることで、ミスマッチによる早期退職が減少し、センター全体の退職率が7.5%改善。
運送業:音声認識VOC収集で品質向上&効率化
お客様の声(VOC)の収集と分析にかかる時間の課題に対し、音声認識技術を導入。応対音声を自動でテキスト化することで、大量のVOCを短時間で分析できるようになり、VOC取得率が130%を超え、品質向上とコスト削減を両立。
業種ごとの成功パターン
定型業務が多い業種(通販、予約受付など)
チャットボットやボイスボット、IVRの積極的な導入により、顧客の自己解決を促し、オペレーターの対応件数を大幅に削減する。これにより、少ない人数で効率的な運営を実現し、CPCを低く抑えることが可能です。
専門知識を要する業種(金融、テクニカルサポートなど)
オペレーターの専門知識と対応スキルを高めるための教育に注力し、一次解決率を向上させる。AIによる応対支援システムや、FAQシステムとの連携を強化し、オペレーターが迅速かつ正確な情報を提供できる環境を整えることで、複雑な問い合わせ対応の効率化と品質維持を図ります。
緊急性の高い問い合わせが多い業種(インフラ、医療など)
高い応答率と迅速な問題解決を最優先し、自動化ツールと有人対応の連携を強化する。あふれ呼対策としてIVRを活用し、緊急性の低い問い合わせは自動受付やWebチャネルへ誘導しつつ、緊急性の高い問い合わせには熟練オペレーターが迅速に対応できる体制を整えることで、機会損失を防ぎつつ品質を維持します。
CPC削減施策を進める際の注意点とリスク管理
コスト削減施策を導入する際には、新しいリスクを早期に発見する仕組みが必要です。顧客満足度調査やNPSの実施、放棄呼率や平均応答時間のモニタリング、オペレーターのスコアチェックなどを定期的に行いましょう。現場からの声を吸い上げることも忘れてはなりません。
また、長期的にモニタリングすることも重要です。CPCやAHT、一次解決率、離職率といったKPIを継続的に追跡し、データに基づいた改善を進めます。PDCAサイクルを回し続けることで、短期的なコスト削減と長期的な品質維持を両立できます。
コールセンターシステムのご相談ならコラボス
ここまで紹介してきたCPC削減やサービス品質維持の取り組みを、現場に根付かせるには適切なシステム選びが欠かせません。コラボスでは、コールセンター運営に必須となるクラウドPBXやCRMはもちろん、蓄積した音声やデータを有効活用できる解析ツールまで幅広く揃えています。20年以上にわたり多くのコールセンターを支援してきた実績があり、お困りごとがあればお気軽にご相談ください。ここではCPC削減に特におすすめのサービスをご紹介します。
クラウドPBX「VLOOM」
「VLOOM」は、アドバンスト・メディア社の音声認識API AmiVoice と Google の Gemini を組み合わせた次世代型CTIサービスです。通話録音をAIが自動で文字起こし・要約するため、記録や共有の手間を大幅に削減。さらにリアルタイムレポートによりオペレーターの状況を即座に把握でき、管理者が必要な時にすぐフォローに入れます。これにより、オペレーターの負担軽減と応対品質の安定化を同時に実現します。
通話録音解析ツール「UZ」
「UZ」は、録音データをアップロードするだけでAIが自動的にレポートを生成する解析ツールです。会話内容の要約やVOC分析、FAQ生成、オペレーター評価など幅広く対応できます。従来は管理者が録音を聞き起こして教育や評価を行う必要がありましたが、「UZ」を使えばその作業が不要に。AIが改善点を明確にレポート化し、教材も自動生成されるため、教育効率の向上と管理者の負担軽減が同時に叶います。
FAQサービス「CollasQ」
「CollasQ」は、社内・社外の両方で使えるFAQサービスです。
社内利用では、問い合わせ対応のナレッジを一元化することで教育や品質均一化に役立ちます。社外利用では、よくある質問をサイトに公開することで顧客が自己解決でき、コール数を削減。コスト低減と顧客満足度向上を同時に実現します。さらに、多言語切り替え機能により、外国語での問い合わせにも柔軟に対応可能です。
実際の活用例としては、操作方法に関する問い合わせを「CollasQ」にまとめておくことで、顧客は電話を待つことなく自力で解決できます。オペレーターはより高度な案件に集中でき、顧客もストレスなく課題を解決できる仕組みが整います。
まとめ
コールセンターにおけるCPC削減とサービス品質維持は、一見すると相反するテーマですが、工夫次第で両立可能です。
CPCを効率指標として捉え、自社に合った基準を持つこと。コスト構造を把握し、削減余地を見極めること。AIや自動化、教育強化、リモートワーク導入など具体的な施策を組み合わせ、同時に品質維持にも注力すること。そしてリスク管理と継続的改善により、持続可能な運営を実現すること。
このような取り組みを通じて、コスト最適化と顧客満足度向上を両立させることができるのです。
この記事の執筆者
コラボスブログ編集部
株式会社コラボスは、2001年に設立。現在、東京・大阪にオフィスを構えており、
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