2025/02/21
マネジメント
コンタクトセンターはAI導入で変わる?メリット・デメリット・導入手順を紹介

企業では、不特定多数の顧客との接点として、コンタクトセンターの活用が重要な役割を占めるようになっています。
しかし、現状では、多様な顧客の質問や要望に応えるためのオペレーターが不足しがちです。
その解決策として注目されているのが、コンタクトセンターへのAIの導入と業務の自動化です。
ただし、コンタクトセンターを本当にAI化できるのか、そしてAIに任せてしまって問題ないのかという疑問を抱く人も少なくありません。
この記事では、コンタクトセンターにおけるAIの導入とその影響について要点を整理して解説します。
目次
AIによってコンタクトセンターの仕事はどうなる?
多くの企業では、顧客満足度を向上させるためにコンタクトセンターを設置しています。
コンタクトセンターでの業務は多岐にわたり、不特定多数のお客様からの問い合わせや質問に対して、適切な回答やアドバイスを提供します。
コンタクトセンターは、日頃から顧客の疑問や悩みを解決し、顧客満足度の向上に貢献します。
しかし、顧客の多様な質問や要望に応えるオペレーターが不足している状況です。
この人員不足の問題を抱えるコンタクトセンターでは、AIの導入や業務の自動化を計画している企業が増加しています。
その内容は、自社のコンタクトセンターで想定されるさまざまな問い合わせに対する解答例を準備し、顧客からの質問に対してあらかじめ用意されたフローに従い、顧客が求める解答を提示するプロセスとなります。
その結果、コンタクトセンターのオペレーター人員不足を解消することに繋がります。
ただし、AIがコンタクトセンター全体に置き換わり、有人のセンターが完全になくなるわけではありません。緊急性のある問い合わせや、感性や感情を伴う相談はなくならないでしょう。顧客と対話し、要約しながら回答するという行為がゼロになることはないはずです。
では、どのような形でコンタクトセンターの中でAIが活用されていくのでしょうか。
次項からは、コンタクトセンターで活用されるAIが果たす役割について解説します。
コンタクトセンターで活用されているAIとは?
コンタクトセンターにAIが導入されることで、主に次のような役割が期待されています。
オペレーター業務支援の自動化
コンタクトセンターの業務は、オペレーターのスキルに頼る部分が大きいと言われています。
しかし、AIを活用することで、オペレーターのスキルに依存せず、新人でもベテランに近い対応が可能となり、自動化が促進されます。
新人オペレーターの業務において最も時間がかかる部分は、各種資料の参照作業です。
AIの導入によって、コンタクトセンターでは通話内容をAIが効率的に把握し、必要な資料を画面上に素早く表示することが可能となります。この結果、資料参照の時間を大幅に削減でき、顧客の疑問や悩みに対して迅速かつ正確に回答することができるようになるため、コンタクトセンターの顧客満足度の向上が期待されます。
データ分析
近年では、コンタクトセンターを含むアウトバウンドコールセンターにおいて、AIを用いた顧客情報の管理とデータ分析を行う企業が増加しています。AIを利用した顧客情報の分析により、既存顧客の中から優良顧客(ロイヤルカスタマー)を抽出し、最適な架電やアップセルのタイミングを見極めることで、顧客への効果的なアプローチが可能となります。
AIを活用したデータ分析は、正確で自動化された分析が可能となり、工数の削減を実現します。人力でもある程度の効果は得られるものの、データが増加するにつれて、管理と分析にかかる工数は増大します。AIによる分析であれば、工数を削減しつつ、効率的でデータに基づいた正確な結果を得ることができます。また、蓄積されたデータとその分析結果は、顧客対応のみならず、マーケティング戦略の策定にも有効に活用できます。
自動チャット
顧客の自己解決を促すためのチャットボットには、AI技術が巧みに活用されています。コンタクトセンターにおいて、チャットボットは自動化されたシステムとして、顧客の疑問に対する回答を提供します。
チャットボットは会話形式で疑問に応じるため、FAQよりも利用頻度が高く、顧客の自己解決の可能性を大幅に向上させる自動化の一環といえます。
現在、チャットボットには2種類が存在します。1つ目は、あらかじめ設定されたシナリオに基づき、「AならBと回答する」といったルールベース型のものです。もう1つは、入力されたデータやユーザーとのチャット内容を解析し、最適な回答を体系的に表示する機械学習型のチャットボットです。 これらのチャットボットをコンタクトセンターに導入することで、返品方法や料金に関する典型的な質問を自動化し、オペレーターへの問い合わせを減らし、彼らの負担を軽減することができます。
音声のテキスト化
AI技術の進化により、オペレーターと顧客のやり取りを音声認識機能でリアルタイムにテキストに自動変換する機能が提供されています。この数年間のIT革命に伴い、音声認識関連技術も大きく進化しています。この音声認識はAIの強力な機能の一つであり、顧客との通話中のメモが不要になるだけでなく、詳細な情報共有を可能にします。これにより、オペレーターの負担軽減と、顧客との発言におけるミスコミュニケーションによるトラブル防止が期待されます。
コンタクトセンターでAIを使うメリット
これまで解説してきたように、AIはさまざまな機能を持っており、コンタクトセンターでも大きな効果を発揮します。
AIをコンタクトセンターに導入し活用することで、質の高い顧客対応が期待できます。コンタクトセンターでAIを活用する最大のメリットは、人(オペレーター)による対応に代わり、自動化された顧客対応が可能になることです。
これにより、人員不足を補う可能性が広がります。さらに、チャット機能を活用することで、顧客の質問に適切に回答することが可能になり、オペレーターの作業負担が大幅に軽減されます。
そのほかにも、音声をテキストに変換する機能があり、顧客とのやり取りを記録して残すことが可能になるため、要約や顧客対応後の議事録作成などの後処理にかかる作業時間を短縮することも可能です。
このように、AIを活用することで、コンタクトセンターに求められる業務の一部を自動化し、対応品質を向上させつつ、オペレーターの負担を軽減することが期待できます。
コンタクトセンターでAIを使うデメリット
一方で、AIを使うデメリットも存在します。AIによる顧客対応は、機械による自動化されたプロセスとなるため、システムやソリューションの導入には大きなコストがかかる可能性があります。
新たなシステムの開発には相当な予算が必要です。特に、高い顧客満足を実現し、コンタクトセンターの作業効率化を目指すには、さまざまな機能を備えたAIの導入が不可欠です。FAQの準備やシナリオの構築、自動化を運用にのせるための工数には、それ相応の時間と手間がかかります。
その結果、人員不足の問題を解消することは可能ですが、AIを導入するためにはさまざまな準備とそれに伴うコストが必要です。
また、AIはあくまで機械であり、自動化されたフローやアルゴリズムによって顧客対応を行います。そのため、AIが顧客の満足を得られる情報提供を行えない場合もあります。
そのような場合、AIを利用せずにオペレーターが最初から対応した方が良かったという事例も少なくありません。AIは経験を積み重ねることで顧客対応のレベルを向上させることができますが、その段階に至るまでに時間と費用がかかるというデメリットもあります。
AIをコンタクトセンターに導入する際の流れ
課題と問題点の整理
そもそも、なぜコンタクトセンターにAIを導入するのでしょうか。まずはコンタクトセンターの状況を理解し、問題や課題を明らかにする必要があります。例えば、「スタッフごとに対応が異なっている」「対応時間が長い」「顧客との会話データが要約されず、有効活用されていない」などの問題が考えられます。これらの問題に応じて取るべき対策も異なるため、まずは問題を明確にすることが重要です。次に、整理した問題に対して、どの業務にAIを導入して自動化するかを決めます。例えば、顧客からの問い合わせに迅速に対応したり、エージェントの負担を軽減することが目標となる場合が考えられます。
導入製品の選定
問題解決のために必要な手順を明確にした後は、計画を立案し、必要な製品やサービスを比較検討します。各製品やサービスには異なる特長があるため、「自社の課題解決に必要な機能を持つものを選ぶ」ことが重要です。以下はコンタクトセンターで活用されるAI製品の一例です。
- FAQシステム: 顧客からのよくある質問に対する自動化された回答を提供するツールです。FAQデータベースを構築し、AIモデルに学習させます。
- チャットボット: ウェブチャットなどで顧客と対話するAIで、単純な質問に迅速に回答する自動化された対話システムです。
- 音声認識システム: 音声通話において顧客の発言を自動的にテキストに変換するシステムです。
データの収集と学習
AIを効果的に活用するためには、学習用のデータを収集し、AIモデルに組み込むことが必要です。例えば、FAQシステムではよくある質問と回答のデータを集めてAIモデルを学習させます。コンタクトセンターにAIを導入する際には、以下の点に留意する必要があります。
- AIに学習させるための準備期間が必要です。
- 利用頻度が低い場合、AIの精度は向上しにくいです。
- AIを継続的に活用するには、人的リソースを適切に確保する必要があります。
AIの精度を高めるためには、十分な学習期間を設けることが重要です。さらに、コンタクトセンターやコールセンターにおいては、AIを導入した後も定期的にデータを蓄積し、自動化されたシステムの精度を向上させる努力が求められます。継続的な利用には定期的なメンテナンスが欠かせないため、適切な人的リソースの確保も必要になります。
AIをコンタクトセンターに導入する際の注意点
コンタクトセンターにAIを導入する際の注意点はいくつかあります。AI導入にあたってのポイントを以下に要約し、箇条書きで示します。
- 精度と利用頻度
AIの精度は利用頻度に影響されることがあります。頻繁に自動化するタスクには、高精度のAIを選択する必要があります。 - セキュリティ対策
AIシステムは大量のデータを扱うため、セキュリティ対策を徹底することが不可欠です。個人情報の保護や不正アクセスへの対策を十分に考慮してください。 - アフターサポート体制
AIの導入後はアフターサポート体制の確認が重要です。トラブルシューティングやメンテナンスが必要になる場合があります。 - 人的リソース
AI運用に必要な人的リソースも考慮が必要です。AIの設定や監視、最適化には専門知識を持つスタッフが求められます。
AIを活用しやすいコンタクトセンターとは
コンタクトセンターにはAIが最適でない場合もありますが、どのような条件下でAIを最大限に活用できるのでしょうか。
規模が大きい
BPOや通販の受注センターなど、多くの人が働くコンタクトセンターでは、AI技術の導入が比較的簡単で、その効果をすぐに実感できる場合があります。チャットボットなどの自動化された応答ツールだけでなく、音声認識やFAQシステムなど、オペレーターを支援するAIもコスト削減に役立つでしょう。
災害に備えたい
企業が災害やパンデミックに備える際にも、AIと自動化の活用がおすすめです。災害発生時でも頼りになるAIが顧客の問題を要約して解決し、安心感を提供します。災害時の対策として、在宅勤務のコンタクトセンターも考慮すべき選択肢です。
ただし、災害時にはAIだけでは対応が難しい場合もあります。その際、人が判断すべき事項に対応するために、在宅勤務のオペレーターを併用することで、より適切な問題解決を図れるようにすることも重要です。
コンタクトセンターにおけるAIの導入事例
ここからは、実際にコンタクトセンターにAIを導入した企業の成功事例を見ていきましょう。
株式会社フォーマルクライン
導入前の課題
- オペレーターの会話時間を増やしたい
- 選定顧客との会話率を上げたい
導入後
- オペレーター1人につき1日の通話時間が約1時間増加
- オペレーターの会話率最大4%増加
アイビーシステム株式会社
導入前の課題
- 予算のあるクライアントに対して効果が曖昧な提案が難しい
- 改善のためのマーケティング施策を提案する方法論が不明確
- リストの分析・検証にかかるスキルとコストがかかる。
導入後
- AIによるエンドユーザーの絞り込みによって接続率・架電効率のUP
- 点数化した購入割合を基にした戦略提案よって、売上・顧客生涯価値のUP
- クライアントへのサービス導入数UP
まとめ
コンタクトセンターにおけるAIを活用した自動化の効果やメリット、デメリット、そして選び方について説明してきました。
これからの時代、限られた人材リソースで顧客満足度を低下させることなく維持し、付加価値の高いサービスを提供していくためには、AIの導入は必須といっても過言ではありません。
ビジネス業界でAIの導入が進む中、コンタクトセンターでのAIの活用が今後さらに増加すると予想されます。
コラボスでは、AIを活用したコンタクトセンター向けの顧客情報活用システムとして「GOLDEN LIST」を提供しています。
自社で収集・蓄積された顧客情報や受注データ、電話応対履歴などを用いて、AIによって「いつ、誰に、どのような商品が売れるのか」を自動解析・予測します。
勘や経験に頼った判断ではなく、確実なデータ解析によるインサイトを提供し、見込み度の高い顧客=優良顧客をピックアップすることが可能になります。
無料トライアルもご利用いただけますので、コンタクトセンターでのAI活用や自動化をご検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。
この記事の執筆者
コラボスブログ編集部
株式会社コラボスは、2001年に設立。現在、東京・大阪にオフィスを構えており、
960拠点以上のお客様へクラウドサービスを使ったCTIシステムを提供。
本ブログ記事サイトでは、様々なニーズを抱えたお客様のお役に立てるような情報を日々発信。
会社情報について詳しくはこちら