FMCとは?仕組みや業務改善効果、メリット・デメリットを紹介

携帯電話(スマートフォン)の普及や企業のテレワーク化が進む中、固定電話と携帯電話を併用する企業も多いのではないのでしょうか。携帯電話の使用台数が増えるとその分、通信コストや契約や支払いの事務作業の手間が掛かるなど、さまざまな弊害が生じます。

こうした課題を解決するのに役立つのがFMCと呼ばれる固定電話と携帯電話(スマートフォン)間で内線通話を可能にするサービスです。

今回は、FMCの仕組みや機能、FMCの導入メリット・デメリットをご紹介します。併せてPBXとの違いなども詳しく解説します。


FMCとは

FMCとは「Fixed Mobile Convergence」の頭文字をとった言葉で、固定電話と携帯電話の融合という意味です。具体的には携帯電話(スマートフォン)に内線機能を追加することを指します。FMCを活用することで、社内の電話料金を抑えられる・支払いの1本化による工数の削減などが可能になります。

携帯電話が普及しはじめた2000年ごろに登場したFMCは、携帯電話に特化したシステムであることが大きな特色といえるでしょう。

FMCの仕組み

FMCの仕組みは、固定電話の回線網と携帯電話網をFMCサーバーでつなぎ固定電話と携帯電話の両方で内線通話ができるシステムです。両端末の内線化にはPBXとの連携が必要ですが、クラウド型FMCはインターネットを利用するため比較的簡単に内線化ができます。

FMCの主な機能に自社の代表電話番号を利用し発着信が可能になる・社内の固定電話と内線通話が可能になる・通信料金を1本化できるなどがあります。

従来の固定電話とFMCの違い

従来の電話とFMC(Fixed-Mobile Convergence)の違いを具体例を交えて表にまとめました。

項目 従来の電話 FMC
内線利用 オフィス内のみ 外出先でも内線利用可能
通話コスト 固定電話の通話料 内線通話は無料、外線通話は携帯電話の通話料
設備 固定電話機が必要 携帯電話やスマートフォンで利用可能
受電対応 オフィス内でのみ対応 外出先でもオフィスの電話を受けられる
導入コスト 固定電話機の設置費用が必要 初期費用が低く、既存の携帯電話を利用可能
柔軟性 固定された場所での利用 テレワークやサテライトオフィスでも利用可能
番号の統合 固定電話と携帯電話で別々の番号 固定電話と携帯電話の番号を統合可能

このように、FMCを導入することで、場所にとらわれず柔軟に内線通話ができるようになり、通話コストの削減や業務効率の向上が期待できます。

FMCの種類

携帯電話が普及し始めた2000年代に登場したFMCは携帯電話事業者がサービス提供を始めました。そのため、携帯電話の契約したキャリア会社のサービスを利用するのが一般的でした。現在は携帯電話の契約時にサービス契約を行うキャリアFMCのほかに専用アプリをインストールしサービスを利用できるタイプもあります。

それぞれの利用法や特徴について詳しく解説します。

キャリアFMC

DocomoやSoftbankなど携帯電話事業者(キャリア)が提供するサービスで固定電話と携帯電話回線をまとめて契約することでFMCが利用できます。スマートフォンなどのモバイル端末1台につき、携帯電話番号と固定電話番号の2つの番号を持つことができるのが特徴です。

キャリアFMCの場合、固定電話と携帯電話(スマートフォン)をPBXで連携させる必要があるため、自社で専用PBXを用意する・もしくは契約先の事業者のPBXを導入することになります。

キャリアFMCのメリットは、携帯電話事業者の回線を利用するため、常に安定した通信状態で使用できることですが、利用キャリアの持つ基地局によっては通信状態が不安定になる場合もあります。

アプリFMC

アプリFMCは携帯電話事業者(キャリア)のほか、通信システム会社(ベンダー)が提供するサービス全般のことを指します。利用の際は、利用者が個別に専用アプリをインストールし各種設定を行います。

アプリFMCは固定電話や携帯電話(スマートフォン)をインターネット回線で連携させるもので、モバイルVoIP型とクラウドPBXの2種類があります。

モバイルVoIP型

固定電話と携帯電話をSIPサーバーと連携させることで内線化できるシステムです。利用の際、社内に専用のSIPサーバーを設置する必要があります。また、キャリアFMCと比べて利用可能エリアが制限されることがデメリットといえるでしょう。

クラウド型PBX

クラウド型PBXは他のFMCのように専用サーバーの設置が不要なシステムです。クラウドと呼ばれるインターネット回線上のネットワークを利用し、固定電話と携帯電話(スマートフォン)を連携させる以外にもオフィスや自宅のPCとの連携が可能なサービスです。

PBXと名前がついているようにFMCの1種ではありますが、PBXのひとつと考えるとよりイメージしやすいでしょう。

FMCのメリット・デメリット

社内の電話回線を1本化することで通信費の削減や事務手続きの簡略化などさまざまなメリットがある一方、PBXなど専用設備が必要になるなどのデメリットも存在します。
具体的なメリットとデメリットについて詳しく解説します。

メリット

FMCの主なメリットは以下の3つです。

  • 固定電話、携帯電話(スマートフォン)の契約を1本化できる
  • 固定電話宛の受電を携帯電話(スマートフォン)に転送できる
  • 社内外で内線通話が可能になる

固定電話、携帯電話の契約を1本化できる

FMCにより電話回線を1本化することで、端末ごとの利用契約の事務手続きが不要になります。また、アプリFMCなら月々の支払や新規の端末使用に掛かる事務処理もブラウザ上で行えるので、業務の効率化にもつながります。

固定電話宛の受電を携帯電話に転送できる

小規模の企業の場合、社員が外出などでオフィスが無人になってしまった場合でも顧客からの問い合わせもリアルタイムで対応が可能になるので、ここ数年、FMCを導入する企業も増えています。

社内外で内線通話が可能になる

通常携帯電話(スマートフォン)での受発信は外線電話扱いになるため、オフィスの固定電話から発信や携帯電話から固定電話に発信にはその都度通話料金が発生します。FMCで両者を連携することで、どちらから発信しても無料で通話が可能です。

デメリット

FMCのデメリットは以下の3つです。

  • 携帯電話の契約先が固定化される
  • 携帯電話から外線を利用する際の費用が割高になる
  • 専用ツールとの連携が必要になる

固定電話、携帯電話の契約先が固定化される

キャリアFMCを導入する際、サービスの提供先である携帯電話事業者と契約を結ぶことになります。そのため固定電話・携帯電話(スマートフォン)とも同じキャリア会社と契約しなければなりません。

すでに事業所や営業所ごとに複数のキャリアと契約している場合、解約や新規契約など手続きが複雑なることや、法人契約扱いになるのでかえって通信費が割高になるなどのデメリットが生じます。

携帯電話から外線を利用する際の費用が割高になる

社内の固定電話と携帯電話(スマートフォン)の内線利用ができるので社内での通話は無料になりますが、社外への外線は別途通話料が発生します。外線を頻繁に利用する場合、FMCを導入しても従来と通信費用はあまり変わらないでしょう。

専用ツールとの連携が必要になる

FMCを利用するには、別途PBXやSIPサーバーなど専用ツールと連携させる必要があります。すでにPBXを導入しているのであれば、既存のPBXと連携させることができますが、新たにサービスを導入する場合はPBXも導入しなければならず、初期費用やランニングコストが掛かることになります。

FMC導入による業務改善の効果

経費を削減できる

FMCサービスを利用してスマホを内線化することで、スマホが内線端末として扱われ、外出先や自宅でリモートワークしている社員とも無料で内線通話が可能になります。これにより、通話料のコストを削減できます。

複数の拠点を持つ企業が拠点ごとに異なるキャリアと契約している場合、FMCサービスを導入してキャリアを一本化することで、基本料や通話料を企業全体で削減することができます。

最近では、スマホ(モバイル端末)を主に使用する企業も増えています。内線化により固定電話の台数を削減できれば、固定電話の導入や切り替えにかかる初期コストや、月々のランニングコストを軽減できる点も大きなメリットです。

ビジネスチャンスをつかみやすくなる

FMCサービスを導入してスマホを内線化することで、担当者が社内にいない場合でも、顧客や取引先からの電話を担当者のスマホに転送できます。これにより、担当者不在による電話の取りこぼしや「取り次ぎ・折り返し電話」のタイムラグが軽減され、ビジネスチャンスの損失を防ぐことができます。また、迅速な対応が可能となり、顧客満足度の向上や信頼関係の構築にもつながります。

さらに、電話の一次対応者から担当者への引き継ぎにかかる手間が省けるため、一次対応者は自分の業務に集中でき、業務効率の向上にも寄与します。

在宅勤務に対応しやすい

FMCを導入することで、場所を選ばない多様な働き方が実現できます。スマートフォンで顧客や取引先からの電話を受けたり、内線通話で社員同士のコミュニケーションが取れたりするため、在宅勤務でもオフィスにいる時と遜色ない働き方が可能です。
FMCにより、育児や介護などの家庭の事情で出社が難しい場合でも在宅勤務が可能になり、通勤時間を有効活用することで業務効率化も図れます。

休日の回線工事が不要で社員の負担を軽減できる

FMCを導入すると、スマートフォンのみで内線電話・外線電話・転送が可能になります。固定電話が不要になり、オフィス移転やレイアウト変更に伴う追加工事も必要ありません。回線工事が不要になることで、工事にかかる手間や費用を削減できるだけでなく、休日に実施されるオフィスの固定電話回線工事に社員が出社する必要がなくなり、社員の負担を軽減できます。

FMCとPBXの違い

FMCと似たサービスにPBXがあります。

PBXは同じビル内でも階の違うフロアや遠く離れた拠点などの固定電話を連携させ、内線通話を可能にするサービスです。FMCと大きく違う点は、固定電話の内線化だけでなく、外線電話の転送機能があることです。この機能はPBX独自の機能になるため、FMCでは行えません。

インターネット上のクラウドを利用して固定電話や携帯電話、PCを連携させるクラウド型PBXは、FMC・PBXの両方のカテゴリーに入ります。

FMC導入に向いているケース

FMC導入は主に以下のようなケースに向いているといえます。

固定電話を使用していない場合

メールなどインターネット上でのやり取りが多いベンチャー企業など、近年では固定電話を使用せずネットや携帯電話(スマートフォン)のみでやり取りを完結する企業も増えており、小規模企業やベンチャー企業やテレワークを導入している企業などはFMCと相性の良い企業といえるでしょう。

従業員の少ない小規模は、1人の社員が営業や打ち合わせなどさまざまな業務を兼務することが多く、外出や離席の回数が多くなりがちです。その場合、顧客や関連企業からの問い合わせなどを固定電話で受けることは難しくなるでしょう。

FMCで固定電話と携帯電話(スマートフォン)を連携させておけば、外出先や離席中でもリアルタイムで通話が可能なため、迅速な対応が可能になります。さらに固定電話と携帯電話(スマートフォン)の支払いが1本化できるので、支払いや更新手続きなどの事務手続きの手間がなく、業務効率の向上にもつながります。

レガシーPBXやIP-PBXをすでに利用している場合

FMCは複数の電話回線を1つの回線網に集約するサービスですが、FMC単体では固定電話との連携はできません。そこで固定電話の回線と携帯電話の回線をつなぐPBXが必要になります。すでにレガシーPBXやIP-PBXを利用している場合、FMCサーバーを連携させるだけでサービスが受けられます。

ただし、キャリアFMCやアプリFMCの中でもモバイルVoIP型は、利用する携帯電話事業者が提供するPBXへの乗り換えが必要になるケースもあるので、導入の前に確認しておくことと良いでしょう。

クラウド型PBXなら低コストでスマートフォンの内線化が可能

クラウド型PBXは専用のPBXやFMCサーバーではなく、インターネット上のクラウドを利用するサービスです。専用の設備を用意する必要がないので初期費用が抑得られます。また、携帯電話事業者以外にもさまざまなシステム会社がサービスを提供しているので、自社の特性に合わせたサービスを選べます。そうした点からも数あるFMCの中でも最も低コストで運用が可能なシステムといえるでしょう。

携帯電話(スマートフォン)以外にもPCとの連携も可能になるため、テレワークや在宅型コールセンターにも活用できます。

まとめ

FMCは、社内の固定電話と携帯電話(スマートフォン)を専用のサーバーやPBXで連携させることで内線化できるサービスです。複数の拠点で利用している携帯電話(スマートフォン)の通信費を抑えることはもちろん、支払いを1本化することで支払いや契約などの事務手続きに掛かる手間や人件費の削減も可能です。ですが、携帯電話に特化したサービスであるため、PBXと比べ利用できる機能が制限されるなどデメリットもあります。

FMCの1種であるクラウド型PBXは、クラウドを利用し固定電話・携帯電話(スマートフォン)に加えPCとも連携できるサービスです。携帯電話回線を利用するキャリアFMCやモバイルVoIP型と違い、クラウドで回線を管理するためPBXと同様の機能が利用できます。

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この記事の執筆者

コラボスブログ編集部

株式会社コラボスは、2001年に設立。現在、東京・大阪にオフィスを構えており、
960拠点以上のお客様へクラウドサービスを使ったCTIシステムを提供。
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